君のとなりで、恋をする
──廊下。


結城先輩は、私を見つけてふっと表情を緩める。


「今度の練習試合の準備、頼める? 大変なら平野と一緒でもいいし」

「は、はい! ……大丈夫です!」


緊張で声が上ずった。


「そっか、助かる」


短く言って、ほんの一瞬だけ、優しい目をした。

その視線に胸が高鳴る。


「……あ、それと」


自分の昼ごはんが入った購買の袋に手を突っ込み、まだ少しひんやりとした紙パックのフルーツオレを取り出して差し出す。


「これ好き? 俺、甘いの苦手なんだよ。自販機でボタン押し間違えた」


そんな言い訳みたいな言葉と一緒に、軽く笑って渡される。

両手で受け取ると、指先が触れそうになって、胸の鼓動が跳ねた。


「え……あ、ありがとうございます……」


か細い声でそう言うのが精一杯だった。

去っていく背中を見送る間も、教室はざわついたまま。


「見た?」

「フルーツオレ!」

「いや絶対あれ……」


誰かが小さくつぶやいた。


「……あれ、絶対わざとだよな」


わざわざ用件を作って、会いに来た。

そのことは、私にも、周囲にも伝わっていた。

だから余計に――胸の鼓動が止まらなかった。






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