君のとなりで、恋をする
⸻片付けの時間。


タオルを集め、ボトルを拭き、並べ直す。

さっきより手順が速い。

出入口に夕方の色が差し込み、床のワックスに光が伸びた。

顔を上げた瞬間、視線が重なる。


⸻結城先輩。


ほんの一瞬で、彼はすぐに次の動作へ戻った。気のせいかもしれない。

でも、たしかにこちらをかすめた気がした。


(私なんか、見られるはずない)


そう思って下を向くのに、胸の熱は引かない。

外のドアの前で一拍止まり、夕風を頬に受ける。昼の熱が静かに引いていく。

校門へ続く通路には、朝より多くの花びら。

やわらかい感触が靴底に伝わる。

ポケットの中で手を握る。

冷たさと温かさの境目が、掌にくっきりあった。


(明日も、来よう)


怖い。

でも来たい。

二つの気持ちがぶつからずに並び、妙に心地よかった。

──その日から、私の毎日が、少しずつ変わっていった。






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