続・幼なじみの不器用な愛し方
「へぇ……」


こう言う話を聞くと、本当に作家さんなんだなぁと思う。


「おもしろいですか?」

「うん。さすが羽生田先生やわ」

「石田さんの感想が帯とかに載るんですか?」

「さぁ、どうやろ。何かしらのコメントには使われるやろうけどな」

「すごい。探せば見つけられるかな」

「探さんでええよ」


目元に皺を刻み、石田さんがわたしに言う。

会話をしながらでも、ページを捲る手は止まらない。

すごいな、わたしだったらどっちかしか出来ない。器用だな。


「その本に……大切な人の忘れ方とか書かれてたりしませんか?」


ココアが入ったコップを両手で包みながら、ぽつりと言葉をこぼす。

中身が揺れて、波が生まれて壁にぶつかる。ぶつかった波は、狭いところで激しく揺れた。


わたしの気持ちみたいだ、と思う。

自分の中で何とか折り合いをつけて均衡を保って、だけど不意に名前が聞こえただけで激しく揺り動かされた。

思い出を振り返るだけで胸が痛むのに、今現在の彼の存在を感じるだけで、こんなにも苦しくなった。


「……」

「……」


少しの沈黙がわたし達の間に広がった。

プルーフを捲っていた手は止まり、時間すら止まったのではないかと思うような空気が流れる。
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