続・幼なじみの不器用な愛し方
「……すみません、変なこと言いました。忘れてください」


誤魔化すようにそう言ってマグカップに口をつけた。

眠ってしまったのか、まめちゃんの反応はない。


「……忘れられへんよ」


ややあって、石田さんが息と一緒に言葉を吐き出した。

顔を上げると、入り口近くの観葉植物に視線を投げる石田さんの姿が目に入る。

その横顔は、時折見せる寂しそうな顔によく似ていた。


「忘れられへん。そんなふうに思うくらい、その人のことが大事なうちは」


あぁ……そうか、と心のどこかにすとんと落ちる。

この人もまた、大切な人を忘れられない経験をしたのだ。

それはもしかすると、現在進行形で。


「そっか。じゃあやっぱり、上手く思い出にしていくしかないんですね」

「そういうことやろな」

「……その過程が大変だなぁ」

「な。勘弁してほしいわ、ほんま」


石田さんが小さく笑ったので、わたしも笑った。

それ以上は何も言わず、わたしは少しぬるくなったココアを飲んで、石田さんは感想を出すために人気作家の新刊を読んでいた。

似た痛みを知っている。それだけで、荒れ狂っていた心がすうっと静寂を取り戻していくのを感じた。




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