続・幼なじみの不器用な愛し方
その勢いのまま、通話終了のボタンを押す。


「……っ」


通話終了を報せる無機質な音が、遠くに聞こえる。


逃げてしまった……。

初めて聞くような、あまりにも切迫したような声。

そんなお母さんを安心させられる言葉を、わたしは今持ち合わせていない。

“元気だよ。心配しないで”

あの声を聞いてしまったら、平然とそう言えるだけの余裕なんてなくなって。

母親にならなきゃいけないのに、娘に戻ってしまいそうになる。


「……手紙なら、平気かな」


元気でやっていると、それだけは伝えなくちゃ。

消印で居場所がバレちゃうと困るから、郵便局に行って、消印なしで送れるか聞いてみよう。


思考を強引に動かせて、鼓膜に張り付いたお母さんの声を上書きする。

苦しさを伴った胸の痛みに、背を向ける。


お腹に手を当ててゆっくりと立ち上がり、その場で肺いっぱいに空気を吸い込んだ。

薄い雲がところどころに浮かぶ空を見上げると、切ったばかりの髪がさらりと流れた。

胸元のネックレスにそっと触れて、口角を上げる。


大丈夫。問題ない。

わたしは今日も、ちゃんと元気だ。




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