続・幼なじみの不器用な愛し方
どうして、
「翔福亭のどら焼き食べたい……」
手元の文庫本に視線を走らせていると、カウンターの向こうから唸るような声が聞こえてきた。
顔を上げると、いつもの席でパソコンに向かう石田さんが、ぎゅっと眉を寄せて口を引き結んでいた。
いつにも増して難しい顔。
石田さん、デッドライン直前モードである。
「買ってきましょうか?」
さっき立て続けにお客さんが帰り、店内には誰もいなかったので、カウンターの中から声をかける。
と、石田さんが硬い表情のままこちらを見た。
「……いや。妊婦さんにパシリなんかさせるわけには」
「今、めちゃくちゃ迷われましたね?」
わたしの言葉に、石田さんが薄く笑った。図星だったらしい。
幸い調子は悪くないし、それに……。
「わたしもいい運動になるので。行ってきますよ」
いつもお世話になっている分、少しでも役に立ちたい。
もう一押しすると、目の下に濃いクマを刻んだ石田さんは素直に頷いた。
翔福亭は、なんと産院や行きつけのパン屋さんの近くにあった。
石田さんが手配してくれたタクシーに乗ると、見慣れた風景がずっと続いた。
産院の近くを過ぎ、パン屋さんがある駅前の交差点を右折し、それから川沿いを少し下ったところの道を左に曲がると、歴史を感じる外観が見えてきた。
手元の文庫本に視線を走らせていると、カウンターの向こうから唸るような声が聞こえてきた。
顔を上げると、いつもの席でパソコンに向かう石田さんが、ぎゅっと眉を寄せて口を引き結んでいた。
いつにも増して難しい顔。
石田さん、デッドライン直前モードである。
「買ってきましょうか?」
さっき立て続けにお客さんが帰り、店内には誰もいなかったので、カウンターの中から声をかける。
と、石田さんが硬い表情のままこちらを見た。
「……いや。妊婦さんにパシリなんかさせるわけには」
「今、めちゃくちゃ迷われましたね?」
わたしの言葉に、石田さんが薄く笑った。図星だったらしい。
幸い調子は悪くないし、それに……。
「わたしもいい運動になるので。行ってきますよ」
いつもお世話になっている分、少しでも役に立ちたい。
もう一押しすると、目の下に濃いクマを刻んだ石田さんは素直に頷いた。
翔福亭は、なんと産院や行きつけのパン屋さんの近くにあった。
石田さんが手配してくれたタクシーに乗ると、見慣れた風景がずっと続いた。
産院の近くを過ぎ、パン屋さんがある駅前の交差点を右折し、それから川沿いを少し下ったところの道を左に曲がると、歴史を感じる外観が見えてきた。