続・幼なじみの不器用な愛し方
「パパさん、到着されたんですね」


ベテランぽい女性の助産師さんが、まめちゃんのベッドを有斗の前に運んでくれる。


「抱っこされます?」

「はい……!」


緊張の面持ちで、しかし有斗の返答は間髪入れずに飛んだ。

助産師さんがベッドからまめちゃんを抱き上げ、有斗に手を伸ばす。


おくるみに包まれたまま、まめちゃんが有斗の手の中に収まった瞬間──糸が切れたみたいに有斗の表情が崩れて、アーモンド型の瞳から一筋の涙が溢れた。


「……っ」


──初めて見た。


生まれてからずっと一緒にいたから、有斗のことはなんだって知ってると思ってた。

いつだって自信満々で、だけどその裏では数え切れないほどの努力を重ねていて、それでも、泣き言は絶対に言わなくて。

仕事ばかりで十分な睡眠がとれていない時だって笑っていた。

大人になってからの有斗が涙を流す姿を、わたしは画面の中でしか見たことがなかった。


「──あさひ」


愛おしさを滲ませた声で、噛み締めるように紡がれた3文字。

大きな窓から差し込む西陽が、2人の姿をキラキラと照らしていて、その姿があまりに幻想的で、目頭が熱くなる。


「すげー迷ってた。色んな名前が浮かんだ。でも、昨日連絡もらってから寝れなくて……夜を明かして、カーテンの隙間から差し込んだ朝陽が……本当に綺麗だったんだ。暗い夜を照らし出す、希望の光みたいで」
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