続・幼なじみの不器用な愛し方

そのあと、

「──で、ここがアキヤマさんの部屋。広くはないけど、まぁ好きに使こて」


黒縁メガネの奥の涼しい目でそう言って、わたしの手のひらに無骨な鍵がぽとりと落とされる。

わたしはそれを胸の前で抱えるようにしながら、慌てて頭を下げた。


「あの、急なお願いだったのに、本当にありがとうございました。ご迷惑をおかけすることもあると思いますが……よろしくお願いします」


わたしの言葉に、その人は表情ひとつ変えずに頷いた。

最低限の会話を終えると、筋の浮いた手を後ろ手にひらひらと振りながらその人は階段を降りて行った。


市街地から更に、川の上流に位置する趣を感じる町並み。

その街角に位置する白い外壁の4階建ての建物。

その2階にある一室──202号室が、今日からわたしの住まいだ。


月が変わり、5月。

わたしは今、京都にいる。




──あの後、色んなことがあった。


わたしが別れ話をしたあの日。

どれだけ言ったって、有斗は首を縦に振らないことを知っていた。

近藤さんとの約束の時間を過ぎ、有斗の電話がひっきりなしに鳴っても、彼はわたしから目を逸さなかった。
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