続・幼なじみの不器用な愛し方
まるで、悪い夢が醒めるのを待っているかのように。


その張り詰めた空気にピリオドが打たれたのは、9時45分になる頃だった。

約束の時間を15分過ぎても出てこないので、合鍵を持っている近藤さんが家を訪ねてきたのだ。


引き止めようとする有斗の手をすり抜け、玄関先にいる近藤さんに応対して、魂の抜けたような有斗を半ば強引に送り出した。

出来る限り笑顔で見送って──扉が閉まった瞬間、玄関に座り込んで泣いた。


──いつか。

いつか、絶対に後悔すると思う。

あの時離れなきゃよかったって、思う日が絶対に来る。


でも今この選択が、わたしに出来る精一杯だったから。

身を引き裂かれそうな痛みに耐えながら、この選択を正解にしていくしかないんだと自分に言い聞かせた。


幸せでいて。荒波に呑まれないで、夢を追いかけ続けて。

何一つ語らずにいなくなるわたしを、どうか許して。




そこからの行動は、自分でも驚くほど早かった。

有斗の家に置いていた荷物を全て引っ張り出し、そのほとんどを処分してマンションを出た。
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