天才幼女セラフィーヌ、ツンデレ辺境伯様とただいま領地改革中!
レオンハルトは腕を組んだまま、しばし考えこんでいた。
やがて、静かに息をついて――

「……わかった。その方向で検討しよう」

私は思わずぱあっと顔を輝かせる。

「しかし発想は大人顔負けだが、絵は年相応のレベルだな」

(ぐ…っ、確かに昔から絵心はないけど!)

くすっと笑われて、もう一度自分の絵を見直す。
幼児レベルに落とし込むためとはいえ、棒人間や野菜の絵は……お世辞にも上手いとはいえない。

「悪いと言っているわけじゃない。むしろ……子どもらしさがあっていい」

その声にからかいはなくて、むしろ安堵するような調子だった。
不思議に思ってレオンハルトを見上げるも、何事もなかったかのようにすぐに引き締まった顔に戻っている。

(あれ、気のせい……?)

「ただいくつか課題がある。まずはそれらを作るための厨房、そして調理する人材の確保だ」

レオンハルトは指を折っていく。

「次に製造した商品の輸送方法。荷馬車が必要だがここにある分では足りないだろう。エーデルハイム領からいくつか持ち込めないか確認する。
それから王都へ卸すルートだ。これは商会に掛け合って交渉する。辺境伯としての名は使えるはずだ」

次々に段取りと、現実的な課題が組み上がっていく。
私は目を丸くしながら話に聞き入っていた。

アイデアを出して、突っぱねられて、何度も議論して――最後は認めてもらって。

(ああ、この感じ……懐かしいな)

「君の提案を実行に移すには『大人の力』が必要だ。そこは俺が動く」

細まったアイスブルーの瞳と交錯する。
向けられた微笑みは優し気で、何より頼もしい。

(……今の、すっごくかっこいいんですけど!?)

私は思わず、レオンハルトにぎゅーっと抱きついていた。

「ありがとう…っ!!」

今の私のウィークポイント。
幼児ゆえに説得力がない、その部分をカバーしてくれる。頼もしすぎる。

「……っ!?セ、セラ!?」

小さな腕で一生懸命抱きしめると、レオンハルトの体がびくっと震えた。

「おい、仮にも令嬢ともあろう者が簡単に抱きつくなど……!」
「?わたし、五さいだよ?」
「年齢の問題ではない……!」

さらに力を込めて抱きつくと、レオンハルトはますますうろたえている。

(あれ、もしかして照れてたりする……?)

「あぶー」
「ばぶー」

レオンハルトの膝の上で、双子がきゃっきゃと笑いながら手を叩いている。

「笑うんじゃない!!」

双子の笑い声がコロコロ響いて、私はつい吹き出してしまった。

(この人となら、きっとこの領地をいい方向に変えられる気がする)


レオンハルトは咳払いし、真面目な顔に戻った。

「セラ、これから忙しくなるぞ」

うん、と私は大きく頷く。


こうして――五歳児とツンデレ辺境伯との領地改革が、本格的に幕を開けた。

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