天才幼女セラフィーヌ、ツンデレ辺境伯様とただいま領地改革中!
「少しずつ返すのはいいが、いずれ資金は底をつく。いたずらに延命するだけだ」

レオンハルトの言う通りだ。
いくら利息負担を軽減しても、元金が減らなければ根本解決にならない。

「ねえマルタ。さっきわたしにつくってくれたやさいスープ、すごくおいしかったよ」

再び肩を落としていたマルタは、突然話を振られて目を瞬いた。

「ええ、この辺りは昔から水が綺麗で土壌も良い土地柄ですから。苦しい中でも、みんなが飢えずに済んでいるのはそのおかげです」

(やっぱり!)

さっき屋敷から外を見渡したとき、気がついたのだ。
水路や道路の石畳などのインフラ系はボロボロだけど、畑だけは荒廃していなかったことを。

(普通だったら雑草で荒れ放題でもおかしくないのに、ちゃんと手入れされてたのよね)

きっと畑だけは、村の人たちが必死に守ってきたに違いない。

「あのね、ここでつくったおやさいを、まちで売るのはどう?そのおかねで、もっと畑をひろげるの」
「……小規模に始めて、利益を再投資して拡大させるということか?」

レオンハルトも思考モードに入って、ぶつぶつと話を整理し始める。

私は、机の上に地図を広げて指さした。
セラフィーヌの記憶によれば、この領地には山から流れる清らかな水源がある。

「お水がきれいってことは、おさけとかもつくれないかな?ビールにウイスキー、あっ、畑に水を引いてつくったぶどうでワインとか!」

六次産業化モデルを語りたいところをぐっと堪える。
五歳児モードで説明するのは、かなりの苦行だけれど仕方ない。

「……酒か」

レオンハルトの視線が地図に落ちる。
ほんのわずかだがその瞳に興味の色が混じったのを、私は見逃さなかった。

(よし、刺さってる!)

私は勢いづいて、かつて前世でやった『地方再生プロジェクト』を頭の中でなぞりながら説明した。地場野菜、地酒、職人、観光――武器になる資源はいくらでもある。

「この川沿いに休耕地があるな。ここを開発できれば可能性があるかもしれない」

レオンハルトはしばらく黙っていたが、やがて深く息をついた。

「……君は本当に五歳なのか?」
「うん、五さいだよ!」

私は誇らしげに胸を張って、にっこり笑った。

「ちょっとだけ、あたまがいいけどね!」

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