仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 言葉を浴びた里依紗は口を開きかけたが、声を失ったように沈黙する。

 その場にいた夏生が口を開いた。


 「……俺も見てきました。どんな仕事でも誌史ちゃんは必死に準備していた。さっきの会議だって、冷静に立てなおした。彼女を貶めるようなことをしてまで自分を上に見せようとするのは、あまりにも卑劣だ」


 真っすぐな声が控室に響く。修吾と夏生の言葉に、その場にいたスタッフたちは全員深くうなずいた。
 里依紗は顔を伏せ、震える指先でスカートの裾を握りしめるだけ。修吾はそれ以上追及することなく、ただ冷ややかに言葉を残す。


 「ここは信頼を積み重ねる場です。このような真似は二度としないことですね」


 重苦しい沈黙の中、誰もがその言葉の重みを噛みしめていた。

 誌史は一歩後ろでその光景を見つめながら、胸の奥が複雑に波打つのを抑えきれなかった。修吾が自分のために怒ってくれたことがうれしい。

 叱責を受けた里依紗は沈黙したまま動けず、控室には再び重苦しい空気が落ちた。だが、修吾と夏生の言葉により、誰もが事実を理解し、これ以上の議論は不要だと悟っていた。
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