仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「パリで出会ってから、誌史の存在が俺の中でどんどん大きくなっていった」


 修吾はまっすぐに誌史を見つめ、言葉を選ぶように続ける。


 「婚約者のふりをお願いしたのは、誌史から笹本夏生を遠ざけるためだ」


 (それじゃ、交流会の場で再会したときから私を……?)

 思いも寄らない言葉の数々が、次から次へと修吾の口から零れていく。


 「努力している姿、諦めない姿、笑ったときの顔……全部、俺にとって大切なものだ」


 誌史の胸が痛いほど高鳴る。これまで恐れてきた別れの言葉ではなく、まったく逆のものが彼の口から飛び出したのだから。

 修吾は掴んでいた誌史の腕をそっと離し、代わりに両手で包み込むように手を握った。


 「誌史、形だけの関係はもう終わりにしよう」


 修吾の瞳は、深く澄んで揺るぎない。
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