最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
「愛して……」
「あなたは気づかなかったかもしれないが、出会ったときから、ずっと」
「いつから……?」
「あの日は、むせ返るような白百合の香りが立ち込めていた……」

(白百合……)

 リーゼはハッと息を飲む。

 ヴァルディエ公爵夫人の死を悼む献花……、白百合が咲き乱れる中、リーゼは少年の眼差しを見た気がした。

「あの日、俺はあなたに心を奪われたのだ。この血肉も何もかも、すべてあなたに捧げると誓った。俺が結婚を了承したのは、あなただったからだっ」

 やるせない思いをぶつけるかのような声音に、リーゼは身を震わせる。

 公爵令嬢でなければ、シルヴィオには出会えなかった。身代わりという役割は、一生変わらないと思っていた。

 けれど、彼は肩書きを失った今も、身代わりとして生きる必要がなくなったこれから先も、リーゼ・ノイエルを愛してくれると言ってくれた。

「俺を、愛しているか……?」
「そうでなければ、こんなふうにあなたと過ごしてはいません」

 シルヴィオはゆっくりと唇を重ねてきた。

 これまでのどの口づけよりも深く、甘く、そして情熱的だった。むさぼるように求められ、リーゼの思考は溶けていく。

「……シルヴィオ、さま……」
「今夜も、覚悟しておけ」

 低く笑った彼の声に、胸が熱を帯びる。
 月明かりの下、白い肌に落ちる口づけは優しく、しかし逃げ場を与えなかった。

 抱き寄せられた腕の中で、リーゼは深く息を吐く。
 首元に何もなくても、彼のぬくもりだけは、確かなものとしてそこにあった。




【完】
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