最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
「愛して……」
「あなたは気づかなかったかもしれないが、出会ったときから、ずっと」
「いつから……?」
「あの日は、むせ返るような白百合の香りが立ち込めていた……」

(白百合……)

 リーゼはハッと息を飲む。

 ヴァルディエ公爵夫人の死を悼む献花……、白百合が咲き乱れる中、リーゼは少年の眼差しを見た気がした。

「あの日、俺はあなたに心を奪われたのだ。この血肉も何もかも、すべてあなたに捧げると誓った。俺が結婚を了承したのは、あなただったからだっ」

 やるせない思いをぶつけるかのような声音に、リーゼは身を震わせる。

 公爵令嬢でなければ、シルヴィオには出会えなかった。身代わりという役割は、一生変わらないと思っていた。

 けれど、彼は肩書きを失った今も、身代わりとして生きる必要がなくなったこれから先も、リーゼ・ノイエルを愛してくれると言ってくれた。

「俺を、愛しているか……?」
「そうでなければ、こんなふうにあなたと過ごしてはいません」

 シルヴィオはゆっくりと唇を重ねてきた。

 これまでのどの口づけよりも深く、甘く、そして情熱的だった。むさぼるように求められ、リーゼの思考は溶けていく。

「……シルヴィオ、さま……」
「今夜も、覚悟しておけ」

 低く笑った彼の声に、胸が熱を帯びる。
 月明かりの下、白い肌に落ちる口づけは優しく、しかし逃げ場を与えなかった。

 抱き寄せられた腕の中で、リーゼは深く息を吐く。
 首元に何もなくても、彼のぬくもりだけは、確かなものとしてそこにあった。




【完】
< 95 / 95 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:19

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

過保護な偽装結婚 〜契約妻なのに推し副社長が甘すぎる〜

総文字数/54,843

恋愛(オフィスラブ)80ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
大手オーナー企業、友澤ビルディングの秘書として働く小塚七海は、大学時代からひそかに「推し」ていた加賀樹生と再会するため、同窓会に出席する。 樹生に誘われて、ふたりで居酒屋に行くも、七海は酔った勢いで、彼への長年の思いを打ち明けてしまう。 「ずっと……、樹生さんが好きだったよ」 「だったら、結婚しないか」 しかし、彼から返ってきた言葉は、『期間限定の契約結婚』という予想外の提案だった。 時を同じくして、樹生は友澤ビルディングの副社長に電撃就任。彼の専属秘書となった七海は、会社を揺るがす不正問題に巻き込まれていく。 ただ大好きな人と結婚しただけなのに。 もどかしいふたりの秘密の結婚生活が、いま始まる──
表紙を見る 表紙を閉じる
声を失った令嬢、フロレンティーナ・カリスト(通称ティナ)は、和平交渉の成功を手助けしたことで国王の怒りを買い、公爵家から追放されてしまう。 行き場を失い、雪の中をさまよう彼女を救ったのは――和平交渉の場で出会った、敵国の騎士団長・ラスフォード・エイルズだった。 静かな異国の屋敷に身を寄せることになり、少しずつ距離を縮めていくティナとラスの間には、穏やかな愛が芽吹いていく。 だが、陰謀の影がふたりを襲い、やがて明かされる出生の秘密。 沈黙の令嬢と心優しき騎士団長の、静かで優しい恋物語。
失くしたあなたの物語、ここにあります

総文字数/144,655

恋愛(その他)211ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
パティシエとして独立の夢を叶えようとしていた矢先、夢を応援してくれていたはずの恋人と父を失った沙代子。 父の四十九日を終え、父が古本屋を経営していた、生まれ故郷の町へ戻ってきた沙代子は、ハーブティー専門のカフェを見つける。 城下町の古い建物を改装してカフェをオープンさせたという青年は、沙代子の亡き父に頼まれて古本も売っていると言う。 カフェを訪れる客が昔に縁のあった古本と出会い、その本にまつわる話に沙代子と青年は巻き込まれていく。 そして、青年に惹かれていく沙代子は、忘れていた青年との思い出を呼び起こしていくのだが……。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop