I 編む
「お母様は、主婦ですか」
梢さんの問いかけに、聡がいえ、と首を横にふる。
「縁があって幼なじみの女性がオーナーをやっているインド料理店のキッチンで働いています。本人は耳が悪い分味覚と嗅覚が鋭くなったと主張するんですけど、生来の食いしん坊じゃないかと。まあ料理好きな母なんです」
明日美の脳裏に、むせかえるようなスパイスの香りとともに、さあっと『pippala』のキッチンの様子が広がる。身振り手振りを交えてインド人のシェフたちとやりとりをしていた年配の女性。
「オーダーは紙に書いて渡してもらえるし。他のシェフたちはインドの方なので、日本語が不自由同士で開き直ってボディランゲージでコミュニケーションをとっているそうです。そうはいっても周囲の理解あってのことなので、お店の方たちには本当に感謝してます」
「いえ、お母様、ご立派です。プロの料理人なんて」
気持ちが昂っているのだろう。梢さんが手話を交えて熱弁する。
ありがとうございます、と聡が照れくさそうに頭をさげる。
すっかり友愛の雰囲気に包まれている。
少しだけ面白くない者が約一名。
梢さんの問いかけに、聡がいえ、と首を横にふる。
「縁があって幼なじみの女性がオーナーをやっているインド料理店のキッチンで働いています。本人は耳が悪い分味覚と嗅覚が鋭くなったと主張するんですけど、生来の食いしん坊じゃないかと。まあ料理好きな母なんです」
明日美の脳裏に、むせかえるようなスパイスの香りとともに、さあっと『pippala』のキッチンの様子が広がる。身振り手振りを交えてインド人のシェフたちとやりとりをしていた年配の女性。
「オーダーは紙に書いて渡してもらえるし。他のシェフたちはインドの方なので、日本語が不自由同士で開き直ってボディランゲージでコミュニケーションをとっているそうです。そうはいっても周囲の理解あってのことなので、お店の方たちには本当に感謝してます」
「いえ、お母様、ご立派です。プロの料理人なんて」
気持ちが昂っているのだろう。梢さんが手話を交えて熱弁する。
ありがとうございます、と聡が照れくさそうに頭をさげる。
すっかり友愛の雰囲気に包まれている。
少しだけ面白くない者が約一名。