【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
「いま、かんがえた!」

「そ、そうか……」

 子供のままごとの延長として捉えられたのかもしれない。さすがのアルフレッドもそれ以上追及してこず、口を閉ざした。

(身体は不便だけど、こういう時は子供ってちょっと便利かも)

 セレスティアが取り皿とおたま(レードル)を持とうとした、その時。
 アルフレッドが軽く手を上げて使用人を呼び、代わりにそれらを受け取ってしまった。

「おとうしゃま?」

「今日は彼女の歓迎会なのだろう? ならば、俺はもてなす側だ」

 そう言って、アルフレッドは器に具材を取り分けはじめた。
 レードルで鍋をかき混ぜる手を止めぬまま、クリスティーヌに問いかける。

「食せない具材はあるか?」

「えっ? あっ、ごっ、ございません……」

「好きな食材は?」

「……貝が、好きです」

「分かった」

「お手を(わずら)わせてしまい、申し訳ございません」

「これくらい大した手間ではない。熱いから気を付けて」

「あっ、ありがとうございます……」

 クリスティーヌは湯気の立つ器を恐縮しながら両手で受け取り、わずかに口元をほころばせて礼を述べた。
 セレスティアはテーブルの下でこぶしをぎゅっと握る。

(やった! お話しした!)

『たった四往復だけどね』

 マリアベルの野暮な呟きはあえて聞き流す。
 端から見れば些細な出来事でも、アルフレッドとクリスティーヌにとっては大きな一歩なのだ。

 セレスティアも取り分けてもらった器をニコニコと受け取った。

 子供が食べやすいように蟹とロブスター、貝は殻が綺麗に外されている。

(お父様、優しい)

 アルフレッドの気遣いに、胸がじんわりと温かくなっていく。

「しぇふと、いっしょに、たくさんがんばったの! たべて、たべて!」

 セレスティアに促されたふたりがそれぞれ匙を口に運ぶ。クリスティーヌがしみじみとした声で「美味しい……」と呟き、アルフレッドもそれに軽く頷いた。

「ほんと? おいしい?」

「はい、とっても! 魚介の旨味がふんだんに詰まったこのスープ、最高です……! 貝は肉厚で味も濃厚ですし、白身魚は身が柔らかくて口の中でほろほろとほどけます。香草と……それから、柑橘の皮も入っているのでしょうか。奥深い味わいと、鼻に抜ける爽やかな香りが素晴らしいです」

 珍しく饒舌(饒舌)なクリスティーヌに、セレスティアは目をパチパチとしばたいた。

「くりすちーぬさま、かんそう、じょうずだね」

 心のままに褒めると、彼女は頬を赤らめ、気恥ずかしそうに目を伏せた。

「実家にいた頃はよく料理をしていましたので、味から材料を考えるのが癖になっていて……。うるさくしてしまって、すみません」

「ううん! すっごくうれしい! おりょうり、しゅみなの?」

「趣味……ええ、そうですね」

 高位貴族の令嬢が日常的に料理をするのは珍しい。
 そのため気になって質問すると、クリスティーヌはやや歯切れ悪く答え、それから「香草はなにを使っているのでしょう?」と尋ねてきた。

「んとね、ふぇんねると、ろーりえと……あとはシェフのおまかせ! あっ、でもね。ひとつ、かくしあじ、いれてもらったの。あててみて!」

「隠し味ですか? えっと……」

 再度スープを口に運んだクリスティーヌが、深く味わうように目を閉じる。


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