【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
第7話:娘の秘策
はじめに使用人が置いたのは、テーブルを熱から守る、ぶ厚い木製の板。
その上に、断熱性に優れた輝石〝遮熱石〟で作られた円筒型の土台が据えられる。
そこに衝撃によって発熱・発火する赤い輝石〝火鉱石〟が投入されると、石そのものが燃料となり赤々とした炎があがった。
これは今日のために、セレスティアがお抱えの鍛冶職人に相談して作ってもらった、特別製の卓上加熱器だ。
できることなら前世のように焚き火で料理をしたかったのだが、さすがに中庭で火をおこすのはやめてほしいと、ジェラールに懇願されてしまった。
前世の祖母と同じくらいの年齢の彼に泣きつかれてしまっては、断念せざるを得ない。
セレスティアはご老人の困り顔に弱いのだ。
そこでどうにか室内で安全に、そして温かな食事を直に食べられる環境を作れないかと鍛冶職人に相談を持ちかけたのが、事の始まりだった。
卓上加熱器の上にそっと載せられたのは、陶器製の大きな鍋。
そう、これこそ本日のメイン料理である──。
「えいよう、まんてん! うまみたっぷり! かいせん、おなべですっ!」
使用人が蓋を開ければ、ふわっと白い湯気が立ち上る。
辺りに漂う食欲をそそる磯の香り。
グツグツと音を立てる鍋の中では、赤く色づいた大きな蟹やロブスター、あさり、ムール貝、イカ、タラがふんだんに入れられ、おどるように煮立っていた。
「魚介はすべて領内で獲れた新鮮なものを使用いたしました。この日のために、お嬢様がシェフとともに試作を重ねた特別な一品でございます」
給仕頭の説明を、アルフレッドはいまだ戸惑いを拭いきれない様子で聞いていた。
それも無理はない。
グランフェリシア王国における上流階級の晩餐会では、すべての料理は一人一皿で提供されるのが常だ。
そのため鍋を囲むなど前代未聞だと、事前にシェフからも説明を受けた。
しかし、アルフレッドとクリスティーヌの場合、上品に目の前の皿と向き合っているだけでは、いつまでも経っても会話は生まれない。
現に、前菜とスープを口にしている間、ふたりは言葉を交わさないどころか、ほとんど目も合わせていなかった。
夫婦の接点を作るためにも、ここはあえて常識を打ち破るべき場面だ。
多少のマナー違反も、子供の思いつきということにすれば許されるだろう。
セレスティアは呆気に取られるアルフレッドに向かって、ニコッと三歳児らしい無邪気な笑顔を向けた。
「さいしょのいっぱいはね。おもてなしするひとが、おきゃくさまに、とってあげるマナーなんです」
「そのような話は聞いたことがないが、一体どこで覚えてきた作法なんだ?」
「えっと……」
まさか《緑の民》がご馳走を振る舞う時の習慣だったのです、と正直に話すわけにはいかない。
セレスティアは胸を張って言い切る。