【第一部完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
『おやおや、可哀想に。震えているね。大丈夫だよ、セレスティア。苦しい思いはさせないから』
「……いや。わたし、しにたく、ない……。こんどこそ、ながいきするって……たくさん、しあわせになるって、きめたんだもん……」
『ふぅん』
ルドウィジアはそれまでの嘘っぽい笑顔を消し、感情の窺えぬ真顔で見つめてくる。
水草色のその目は月明かりを受けて不気味な光を湛えていた。
『死にたくないなら、どうして僕のところに来たんだい? 《緑の民》の生まれ変わりなら、僕がどういう妖精か、よく知っているだろう?』
「ほしつゆくさがないと、しがいちゅうを、おいはらう、くすり、つくれない……。そうしたら、たくさんのひと、しんじゃうから……」
『構わないじゃないか、人間がいくら死んだって』
「……え?」
『自分の命より大切なものなんてないだろう? それに風の噂では、君は領主の娘だそうじゃないか。死骸虫が増えたとして、上級国民の君が飢える心配はないはずだ』
確かにたとえ死骸虫が大量発生しても、セレスティアやクリスティーヌ、屋敷のみんなが飢えて命を落とすことがないよう、アルフレッドが手を打ってくれるに違いない。
現に五年前の蝗害とそれに続く飢饉の時も、生まれたばかりのセレスティアは餓死することなく、今日まですくすくと育ってきた。
『下々の者がいくら死んだっていいじゃないか。顔も知らない人様のために、みずから危険を冒すなんて正気の沙汰じゃないよ』
正気の沙汰じゃないなんて、妖精王に逆らって背徳感を得ようとする貴方には言われたくないと、セレスティアは少々カチンと来た。
それになにより、他人がいくら死んでも構わないという先程の言葉も気に食わない。
「…………なんて、いない」
『ん?』
「しんでいいひとなんて、ひとりもいない!」
気付いた時には、そう言い返していた。
先程まで凍りついたように動かなかった身体も、うまく回らなかった頭や舌も、次第に活力を取り戻していく。
傷つき、命を落とし、泣き叫ぶ人の姿は、前世で嫌というほど見た。
死がどれほど悲しく、そして恐ろしいものなのか、セレスティアは誰よりよく知っている。だからこそ。
(わたしはわたしの、できることをする。悲劇はもう、たくさん──!)
消えかけていた決意の灯が息を吹き返す。
胸の奥底でごうごうと燃えさかる炎が、セレスティアの全身を支配していた恐怖を溶かしていく気がした。
「わたしと、とりひきをしましょう」
『取引だって? 命以外に、君に差し出せるものなんてあるの?』
「ある」
セレスティアが迷いなく答えれば、ルドウィジアは器用に片眉を跳ね上げ、それから面白がるように口元に笑みを刻んだ。
「……いや。わたし、しにたく、ない……。こんどこそ、ながいきするって……たくさん、しあわせになるって、きめたんだもん……」
『ふぅん』
ルドウィジアはそれまでの嘘っぽい笑顔を消し、感情の窺えぬ真顔で見つめてくる。
水草色のその目は月明かりを受けて不気味な光を湛えていた。
『死にたくないなら、どうして僕のところに来たんだい? 《緑の民》の生まれ変わりなら、僕がどういう妖精か、よく知っているだろう?』
「ほしつゆくさがないと、しがいちゅうを、おいはらう、くすり、つくれない……。そうしたら、たくさんのひと、しんじゃうから……」
『構わないじゃないか、人間がいくら死んだって』
「……え?」
『自分の命より大切なものなんてないだろう? それに風の噂では、君は領主の娘だそうじゃないか。死骸虫が増えたとして、上級国民の君が飢える心配はないはずだ』
確かにたとえ死骸虫が大量発生しても、セレスティアやクリスティーヌ、屋敷のみんなが飢えて命を落とすことがないよう、アルフレッドが手を打ってくれるに違いない。
現に五年前の蝗害とそれに続く飢饉の時も、生まれたばかりのセレスティアは餓死することなく、今日まですくすくと育ってきた。
『下々の者がいくら死んだっていいじゃないか。顔も知らない人様のために、みずから危険を冒すなんて正気の沙汰じゃないよ』
正気の沙汰じゃないなんて、妖精王に逆らって背徳感を得ようとする貴方には言われたくないと、セレスティアは少々カチンと来た。
それになにより、他人がいくら死んでも構わないという先程の言葉も気に食わない。
「…………なんて、いない」
『ん?』
「しんでいいひとなんて、ひとりもいない!」
気付いた時には、そう言い返していた。
先程まで凍りついたように動かなかった身体も、うまく回らなかった頭や舌も、次第に活力を取り戻していく。
傷つき、命を落とし、泣き叫ぶ人の姿は、前世で嫌というほど見た。
死がどれほど悲しく、そして恐ろしいものなのか、セレスティアは誰よりよく知っている。だからこそ。
(わたしはわたしの、できることをする。悲劇はもう、たくさん──!)
消えかけていた決意の灯が息を吹き返す。
胸の奥底でごうごうと燃えさかる炎が、セレスティアの全身を支配していた恐怖を溶かしていく気がした。
「わたしと、とりひきをしましょう」
『取引だって? 命以外に、君に差し出せるものなんてあるの?』
「ある」
セレスティアが迷いなく答えれば、ルドウィジアは器用に片眉を跳ね上げ、それから面白がるように口元に笑みを刻んだ。