【第一部完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
 子供はとうに寝る時間だ。
 寝室はすでに灯りが落とされ、しんと寝静まっている。
 
 足音を消してベッドに近づくと、愛娘が「すぴぃ~、すぴぃ~」と安らかな寝息を立てていた。

「んぅ~……。ふへへへ……」

 遊んでいる夢でも見ているのか、セレスティアは手足をモゾモゾと動かし、ふにゃりと笑顔を浮かべた。
 なんとも愛らしい表情だ。この光景を思い出せば、これからの激務にも耐えられそうな気がする。
 
 アルフレッドは目を細め、ずれた薄手の毛布を丁寧にかけ直した。そしてそっと、セレスティアの頭を撫でる。

(おやすみ、セレスティア。──いってきます)

 心の中でそう告げて、アルフレッドは静かに寝室を出た。


 エントランスホールへ向かうと、そこにはジェラールと、夜着の上にローブを羽織ったクリスティーヌが佇んでいた。

 使用人の見送りはいらないとジェラールにあらかじめ伝えておいたため、玄関前にいるのはそのふたりだけだ。

 静まり返った空間にアルフレッドの靴音が大きく響き渡った。その音で、クリスティーヌがハッとして振り返る。

「旦那様……! 王都へ発つと伺い驚きました。先日お倒れになったばかりですのに……。心配ですが、それほど重要なお仕事なのですね?」

「ああ。気を揉ませてすまない。戻ったらすべてを話す。それまで屋敷の留守とセレスティアのことを頼む」

「はい、お任せください。どうかお気をつけて、いってらっしゃいませ」

 頭を下げるクリスティーヌとジェラールに見送られ、アルフレッドは馬車に乗り込み、王都へ向かって出発したのだった。


< 80 / 86 >

この作品をシェア

pagetop