【第一部完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
「実は、俺がここ最近対応していたのは、死骸虫の問題なんだ」

「死骸虫……」

 クリスティーヌの顔が一瞬にして青ざめる。

 その横顔とアルフレッドの顔を交互に眺めながら、セレスティアは必死になんのことか分からないといった表情を浮かべた。普通の三歳児は、死骸虫がどれほど恐ろしいものなのか知るよしもないからだ。

「また……五年前のようなことが、起きるのでしょうか……」

「安心してくれ、クリスティーヌ。確かに今年は大量発生が予想されていたが、すでに死骸虫を駆除し、作物を守る薬剤が完成している。五年前のようには決してならない」

「本当ですか……?」

「ああ。本当だ」

 力強く首肯したアルフレッドは、次いでセレスティアへと視線を移した。

「死骸虫に対抗する薬ができたのは、お前のおかげだ」

「わたし?」

「あぁ、そうだ。お前が分けてくれたホシツユクサ、あれがなければ駆除剤の開発は進まなかった。心から感謝するよ、セレスティア」

「えっと……わたし、おとうしゃまのおやくに、たてた?」

「役に立ったなんてものじゃない。お前はこの国の全国民を救ったんだ。大手柄だよ」

「おおてがら!」

 あぁ、なんていい響きだろう。
 動きにくいドレスで森を歩き、ルドウィジアと命がけの交渉をした甲斐があった。

(わたし、みんなを……この国の人たちを守れたんだ)

 そう思った瞬間、はかり知れない喜びが胸に湧き上がってきて、セレスティアは弾む心のまま鼻歌をうたう。

「おおってがら~! おおってがら~! おてがら、おてがら、みーんなえがお、うれしいなぁ~」

 上半身を左右に揺らしてはしゃげば、隣にいたクリスティーヌが「ふふっ」と笑ってセレスティアの頭を優しく撫でてくれた。ますます嬉しくなって、足が勝手にバタバタとしてしまう。

(ハッ──! まずい)

 つい三歳の本能に突き動かされてしまった。

 慌ててアルフレッドの方を見ると、案の定はしたないと思ったに違いない。久々に、ものすごく怖い顔をしていた。

(ひっ、ひぃいい! せっかく、褒めてもらえたのに。失敗しちゃった……)

 下を向いてしゅんと落ち込んでいると、クリスティーヌが「旦那様」と向かいにいるアルフレッドに声をかけた。
 なんだろうと思い、セレスティアがうつむけていた顔を上げれば、正面のソファから立ち上がったアルフレッドと目が合う。

 ゆっくりと歩み寄ってきた彼が、静かに隣に腰を下ろした。相変わらず眉間には深いしわが刻まれ、唇は固く引き結ばれている。

(えっ? えっ?)

 怯えて戸惑っていると、アルフレッドが不意に腕を持ち上げた。
 その怒っているような表情も相まって恐ろしく、ぎゅっと目を閉じて身を縮こませた、次の瞬間。

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