【第一部完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
「ありがとう、セレスティア」

 耳に飛び込んできた穏やかで優しい声。
 頭にぽんと載せられた大きな手が、ぎこちなく左右に動く。

 まさか。これは──。

「なで、なで……?」

「あ、あぁ。そのつもりだが……嫌か?」

「ううん! いやじゃない、いやじゃないよ! すごく、すーっごく、うれしい! もっともっと!」

 手のひらに押しつけるように頭を差し出せば、アルフレッドが再びゆっくりと手を動かしはじめる。
 ただ頭を撫でているだけなのに、まるで難問に直面しているかのような真剣な顔だ。

 行動と表情のアンバランスさが面白くて、そしてなにより初めて親子らしい触れ合いができたのが嬉しくて。
 セレスティアは、顔がほころぶのを止められない。

「あのね、あのね! このおちゃに、はいってるハーブね。もーりすおじさんと、いっしょに、そだてたんだよ!」

「そうなのか? すごいな」

「えへへ! でしょでしょ! あとね。きょうはね、もじのれんしゅうしたの。おてほんみなくても、かけるようになってきたんだよ!」

「ほう。それは頑張っているな」

「うん! あとはねぇ、あとはねぇ~」

 多忙な父とゆっくり話せる貴重な機会。
 しかも今ならなんでも褒めてくれる気がして、セレスティアは指折り数えながら、日頃頑張っていることを挙げていく。

 アルフレッドも、娘が褒められたくて話していることに気付いているのだろう。頭に置いた手は離さず、ずっと優しく撫でてくれていた。

「私、お茶のおかわりと先程焼いたクッキーを持ってきますね。ポーラさん、お手伝いをお願いできますか?」

「かしこまりました」

 クリスティーヌが立ち上がり、ポーラとともに談話室を出て行った。
 もしかしたら、親子水入らずで過ごせるように気を遣ってくれたのかもしれない。

 母と乳母の思いやりを感じ、いっそう胸が温かくなる。

「でねでね、あのね。くりすちーぬさまと、ごはんのマナーのれんしゅうも、してるの。きのうは、『かんぺきです』って、ほめてもらえたんだよ!」

「それはすごいな。では、どこの晩餐会に呼ばれても大丈夫だな」

「うんっ! まかせてよ!」

 セレスティアは顎をツンと上げ、ドヤ顔で胸を張った。

 それを見つめるアルフレッドの顔つきは依然として固いものの、今はもうそれを怖いとは思わなかった。なぜならセレスティアの頭を撫でる手がとても優しくて、怒ってなどいないと分かるから。

 温かなぬくもりと壊れ物を扱うような触れ方が、表情よりも雄弁に伝えてくる。
 アルフレッドがセレスティアを、とても、とても、大切に想ってくれているのだと。


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