野いちご源氏物語 四六 椎本(しいがもと)
この年、(はち)(みや)様は厄年(やくどし)でいらっしゃった。
今年が寿命(じゅみょう)になるかもしれないと、いつも以上に熱心に修行(しゅぎょう)をなさる。
現世(げんせ)執着(しゅうちゃく)のない方だから、きっと極楽(ごくらく)浄土(じょうど)へお行きになるだろうけれど、唯一(ゆいいつ)の気がかりは姫君(ひめぎみ)たちのこと。
お亡くなりになる間際(まぎわ)にお心を乱す原因になってしまうでしょうね。

<完璧に理想どおりの男でなくともよい。世間体(せけんてい)が悪くない程度の求婚者が現れてくれないだろうか。誠実に姫の後見(こうけん)をすると言うのなら、私は知らん顔でさりげなく許そう。姉妹(しまい)それぞれが夫を持ってくれたら、安心して(まか)せていけるのに>
八の宮様はそこまで妥協(だきょう)なさっているけれど、それほど真剣に姫君にお声をかけようという男性はいない。

たまに姫君の気を引こうとする人はいるのよ。
でもそれは、まだ若い貴族がちょっとした遊びで声をかけてくるだけなの。
落ちぶれた皇族(こうぞく)の姫君と()(くだ)して、都の外へ出かけたついでに、図々しく交流を求めてくる。
そういう男たちのことを宮様は無礼(ぶれい)(もの)とお思いになる。
お手紙が届いても、姫君たちにお返事はお書かせにならない。
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