野いちご源氏物語 四六 椎本(しいがもと)
使者(ししゃ)宇治(うじ)に着いたときには、すでに日が落ちきっていた。
今から帰るのは大変だろうから泊まっていくようにと、大君(おおいぎみ)女房(にょうぼう)を通じておっしゃる。
でも、お使者は急いでいる。
匂宮(におうのみや)様がお返事をお待ちかねでいらっしゃいます。お返事をいただき次第(しだい)、都に戻るつもりです」
と言うので、あまり待たせるのも気の毒なの。
もちろん大君だって落ち着いていらっしゃるわけではないけれど、お使者がかわいそうで、お返事をお書きになった。

鹿(しか)が声を合わせて鳴くように、私たち姉妹も(きり)の深い山里(やまざと)で泣いております」
喪中(もちゅう)らしく黒っぽい紙をお選びになったから、(あか)りの下でもうまく書けたかどうかはっきりしない。
細かい部分にこだわることもなく、筆の勢いに(まか)せてお書きになった。
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