恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
 おまけに、普段は掛かってこない人から電話があった。

「なんでこっちに住民票移してんの?」

 実家の母からだ。
 普通の郵便物は元住所近くの郵便局を受け取りにしているが、国保等の公的な通知は実家に行く。

「……仕事辞めてマンション家賃払えなくて友達の家に泊まってる」
「嘘でしょ。さやか(妹)が ″お姉ちゃん旅系ユーチューバーやってるんじゃないか″って言ってたわよ」

 こっちもバレてた。
 動画の輪郭や体型だけで身内というのはわかるらしい。
 母が父に代わった。
 口調は穏やかだが、声に怒りが滲んでいる。

「ユーチューブだか何だか知らないけど、いい歳してみっともないだろ。専門学校まで出て何してる? 直ぐに帰ってこい、丁度良い見合い話あるから、さっさと結婚しろ」
「見合いなんてしないから」

 ベタな展開に嫌気が差して電話を切った。
 しかし、縁まで切るわけにはいかない。
 何故口座振替にしなかったのか。
 あぁ、納付書、取りに実家に行かなきゃ。思わず頭を抱える。

 薪の準備をしながら塩田が淡々と言った。

「潮時、かもな」

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