恋愛期間0。彼の毒はスイーツより甘かった。(仮)
 まるで長年連れ添った相手のセリフだ。

「……稼げてないから?」
「問題はそこじゃない」
「え?」
「数字だけじゃないって言ったろ?」

 意味がわかんない。
『一緒に人気ユーチューバーになろう』って誘ってきたのに。
 そもそもたかだか一ヶ月でそんなに何本も撮れないじゃない。収益の条件だって本数や再生時間も関係してるはずだ。

 しかし、塩田が続けないと決めてるなら、私にとやかく言う権利はない。

 黙々と焚き火の準備をし、ひたすらスフレケーキの為にメレンゲを作る。
 店では電動ミキサーを使っていたが、撮影映えしないので泡立て器でやる。

「……っ」

 流石に手首に響いて、顔をしかめてしまった。

「俺がやるよ」

 カメラを止めて塩田が私から泡立て器を奪う。

「骨折れる作業だよ?」
「母親が玉子焼きの時にメレンゲ作ってたから、やってみたかった」
「玉子焼きでメレンゲ?」
「ん、めちゃフワフワで美味かった」
「マメなお母さんだね」
「大人になって一回作ってみたけど直ぐにしぼんだよ」
「あぁ」

 それ、薄力粉入れたらいいんだよ。

 それにしても、塩田が自分のこと話すの珍しいな。
 端正な横顔を見つめながら、もっと聞きたいと思ってしまった。

「ツノが立つってこういう事?」

 ボウルの中で立派なメレンゲが出来上がり、塩田が満足そうにしている。
 メレンゲの味を確かめるため指ですくい、残りをそのツンとした鼻先に付けてみる。

「げ、何すんだよ」
「可愛い、お風呂中の犬みたい」



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