華麗なる幼女転生

幼女と父

 絶対絶対、あいつを許さない!

「ラナちゃん、パパですよ~~ッ」

 現在、私は五歳の女児。どうやら私はラナという幼女に転生してしまったらしい。前世は昨日のことのように覚えている。

 無実の罪で悪女とされ、王都を追放され、衰弱して旅の途中で息絶えてしまった。実に惨めな最期だった。

 私を悪女と決めつけた犯人を絶対に許さない。生まれ変わってもその気持ちは変わらない。それに、犯人の居所はすでに分かっている。

 そう、犯人は現世の私にメロメロなラナの父親、ロット・ニールだから!

 どうしてくれようかしら。この男の悪事を調べて公表しようかしら。でも、そうすると今の私が路頭に迷うことになる。

 それにこの男、ラナのことを目に入れても痛くないくらい可愛がっている。だから、私がロットを嫌っている仕草をすれば、勝手に自滅してくれるのでは?

 今は帰宅したロット、父が私に愛想を振りまいているところ。その顔、すぐ泣き顔にして差し上げてよ。

「ラナちゃんッ」
「…………」

 私は父に一瞥もせず、お人形のジェニーとの遊びを再開させた。このジェニーはお母様が買ってくれたもの。金髪に青い瞳、とても可愛らしい女の子。前世では十九だったけれど、人形遊びが楽しいのは五歳になったからかしら。

 父は無視する私に怒っているかもしれない。でもいいの。こっちだって嫌いだわ。貴方の所為で私は今ここにいる。

「反抗期かな……可愛いね!」
「……」

 は?

 反抗期かな?

 可愛いね!?

 なんで無視されて「可愛いね」になるの? 頭湧いているのかしら?

 こんな男だから勘違いして私を陥れたのだわ。こんな男に、この私が……。

 前世を思い出していたら悲しくなってきた。ここはもう、あのような苦しみは無いのに。その原因なら常にチョロチョロしているけれど。

「お母様、お庭に行きたいわ」
「そうね、行きましょう」
「パパも行こう!」
「パパはお仕事がんばって」

 ツンと冷たい返事をする。父は何故か満面の笑みだった。

「ラナちゃんが応援してくれるなら、パパ何十時間でも頑張れるよ! いってきます!」

 最後はスキップをして部屋を出ていった。娘の前ではこんな感じなのね、気持ち悪いわ。

 優しい母と一緒に中庭へ行く。母はずっと騒がしい父と違って落ち着いていて、貴族らしい振る舞いをしている。これぞお手本。父も少しは見習った方がいい。あのような不審者、いつか職質されるわ。

「ラナちゃん。お部屋に飾るお花を摘もうね」
「うん」

 母と手を繋いで中庭をあちこち歩き回った。悔しいながらそれなりの地位にいる父の屋敷はもちろん中庭も広大だ。前世の私もそれなりでしたけれど!

「今日は明るい色のお花にしようかしら」
「ラナも選ぶね」

 二人でいくつか見繕う。私が水魔法で空中に水たまりを作り、そこに茎の部分を入れた。

「これで新鮮なままお花を運べるわ。ラナちゃんは本当に水魔法がお上手」
「えへへ」

 遺伝で水魔法を使える私には一つ秘密がある。実は使える魔法は水魔法だけじゃない。前世の因果か、両親が使えない風魔法も使えるのだ。とってもおきの秘密なので、特に父には絶対言わない。復讐の機会を狙い、ここぞという時に使うことにしている。

 ここニール家は代々水魔法の家系で、結婚する相手も水魔法を使える貴族というのが定番らしい。たまに魔法を使えない人もいるけれど、子どもの誰かは受け継ぐので、使えないからと言って迫害はされていない。それを聞いた時はほっとした。

 彼なら魔法を使えない親族を軽蔑しそうだと思ったから。血が繋がっている相手には少しは人間らしい一面もあるのかしら。彼も人間だったのね。

 二人で花瓶に花を生ける。その後は講師がやってきて勉強の時間となった。勉強は嫌いではない。新しい知識を身に着けるということは、未来の選択肢が増えるから。知識があると思いがけないところで役に立つこともある。やっていて損はないわ。

 午後になって講義が終わり、おやつを食べる。今日のおやつはシフォンケーキだった。すると、廊下からげんなりする声が聞こえてきた。

「ラナちゃん、ただいま!」

 ノックと同時に入ってきたのは父であるロット・ニール。もう存在だけで五月蠅いわ。当主なのだから、もっと夜までぎっちり予定を入れて働いてきてほしい。この大きさの声を聞くのは一日数十分で十分。というより、傍にいてほしくないの。

「ふん」
「まだご機嫌斜めなのかなぁ? そんなお顔のラナちゃんも天使だね。そうだ、今日はお土産を持ってきたんだ」
「……」

 気高い貴族の私は加害者のそんな施しを受けたりはしないわ。でも、可哀想だから見るだけは見てあげる。何を持って帰ってきたのかしら──。

「はい。ラナちゃんが大好きな隣町の限定クッキーセットだよ。予約一か月待ちだったから受け取ってきた」
「クッ……キー……!」

 目の前には缶の中に入った煌びやかな宝石が私を歓迎してくれていた。ただのクッキーじゃない。果肉のゼリーがクッキーに練り込まれていたり、クッキーにお顔が書いてあったり、動物の形をしていたり。本当に本当に芸術的で可愛いの。

 これは……仕方がないわ、受け取ってあげる。

「あ、りがとう、ございます。お父様」
「ラナちゃんッッ照れてるラナちゃん世界一ッ! この顔を永久に保存できる魔法があればいいのに!」

 そんなのあったら怖すぎる。でも、このクッキーの芸術をずっと見ていられる魔法があったら、確かに素敵かもしれない。

 父のくせにやるわね。今日は負けよ。でも見ていらっしゃい。

 明日こそ目にもの見せてあげますわ。

       第一話 完
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