君の事好きになっても良いですか?



「じゃあ、矢口君。」
「ここまでで。」


琴音先輩は淡々と俺に告げる
俺は足を止め、笑顔を作る。


「今日は本当にありがとうございました!」


「こちらこそ、ありがとう!
「気をつけて帰ってね。」



「はい!」


一歩下がって、深く頭を下げる。

「琴音先輩、お疲れ様でした。」
「明後日から学校で会った時は」
「声かけて良いですか?」


「もちろんだよ!」
「じゃ、またね!」

琴音先輩は満面の笑みで手を振る。

ダメだ……こんなのどんどん好きに
なってしまう。
俺の顔が急激に赤くなるのを
隠して手を振る。

琴音はそれに気づかないまま、
柔らかく微笑んだ。

そして、琴音先輩は彼氏の元に
走って俺の前から消えた。






──琴音と合流

「琴音、お疲れ!」

俺は琴音の顔を見ると、
すぐに不安は吹っ飛んで
笑顔になる。



私は理央の声を聞いた瞬間、
私の表情が一気にほどける。


「待たせてごめん!」


「全然。」


俺は、まだ外から
ちらっとこちらを見てる
バイト中に居た男の子の背中を見る。


……あの子か。

でも、何も言わない。


琴音が俺の隣に立つだけで、
答えは十分だった。


「琴音。」
「今日、オムライス食べて帰ろ。」



「うん!」
「私もオムライスの気分だった♪」



夕焼けに染まる街の中、
二人は並んでオムライスを目指し歩き出す。




本屋を離れて俺達は恋人繋ぎをして
少し歩いた先に、
小さなオムライス専門店があった。

ガラス越しに見える店内は、
あたたかいオレンジ色の照明で満たされている。


「ここ、前に気になってたんだ。」


俺ががそう言うと、
琴音は少し目を輝かせた。


「私も!美味しそうだよね!」

ドアを開けると、
バターと卵の香りがふわっと広がる。


「いらっしゃいませ。」
「2名様でよろしいでしょうか。」


「「はい。」」


店員に案内された
カウンター席に並んで座り、
メニューを開く。

「デミグラスにする?」


「うーん……私は王道の」
「ケチャップかな。」


「じゃあ俺はデミにしよう。」


注文を終えたあと、
一瞬、沈黙が落ちた。


俺ははグラスの水に視線を落とし、
少しだけ間を置いてから口を開く。


「琴音……さっき、バイト先で」


下を向いていた琴音が顔を上げる。


「横にいた男の子、誰?」

声は穏やかだったが、
その奥に、ほんの少しの緊張が混じっていた。



「ああ、矢口君ね。」


「後輩?」


「うん。新しく後輩が出来ちゃった。」
「今日が初日だったみたい。」

琴音は、隠すことなく続ける。

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