君の事好きになっても良いですか?
*理央*
白鷺駅の改札前。
人の流れは途切れないのに、
俺の意識は、
ひとつの方向にしか向いていなかった。
琴音、まだかな……
スマホの画面を見る。
時刻は、バイトが終わる頃。
急に入ったって言ってたし、
遅れるよな……忙しそうだし。
分かっている。
頭ではちゃんと理解している。
それでも、胸の奥がざわつく。
……あの男の子、琴音の後輩。
この間昼過ぎ、
客としてスマイリーバーガーに入った
時の光景が、ふと脳裏に蘇る。
琴音のレジ。
制服姿。
いつもより少し大人びて見えた横顔。
すごい頑張ってるな、って思った。
誇らしかった。
本当に……でも。
隣にいた、あの後輩が琴音との
距離が、近かった。
仕事だから。
先輩と後輩だから。
分かっているのに、
胸の奥で小さな棘みたいな感情が残った。
俺、独占欲強いな……
琴音と付き合って初めて知った。
俺、今まで過去の付き合った人達には
こんな感情が全くなかった。
欲も嫉妬も独占欲も全て琴音を好きになって
初めての経験。
苦笑する。
琴音は、俺の彼女だ。
それでも、好きだから不安になる。
ホームを行き交う人を眺めながら、
理央は深く息を吸った。
今日、待つって決めたのは俺だ。
少しの時間でも会いたい。
それは、わがままかもしれないけれど
でも……
今日一日頑張った琴音の顔、見たい。
声が聞きたい。
ただそれだけだった。
ベンチに腰掛け、スマホを握る。
今、誰と話してるんだろう
今、接客中なのかな……
……後輩と仲良く話してるのかな……。
一瞬、心がざわつく。
いや……
それでも、信じる。
夏休みの花火大会。
迷いながらも、
最終的に自分を選んでくれた琴音。
あの時の言葉、忘れてない。
”私、理央君が好き”
その一言が、
今も胸の奥で、ちゃんと息をしている。
俺は、待つ側でいい。
帰る場所になれれば、それでいい。
改札の向こうに、
見慣れた白鷺高の制服が見え始める。
……来た?
一瞬、期待して、
違うと分かって、少し肩を落とす。
焦りすぎだ……落ち着け。
自分に言い聞かせる。
晃だったら、どう思うかな
ふと、幼なじみの顔が浮かぶ。
あいつなら、もっと余裕あるのか?
それとも、同じように不安になるのか?
答えは出ない。
ただ一つ、確かなのは。
俺は、琴音が好きだと言う事。
だから、待つ。
改札の表示が変わり、
また人が流れ込んでくる。
それと同時に駅の出入口から
見慣れた姿を、見つけた。
胸の奥が、
すっと静かになる。
立ち上がる前に、
理央は一度だけ、心の中で呟く。
おかえり……琴音、愛してる。
理央 side 終わり