君の事好きになっても良いですか?
晃父
「ほんとだなぁ」
「琴音ちゃんも、」
「もう完全に家族みたいなもんだ。」
晃母
「昔から一緒に育った感じですもんね。」
晃のお母さんがそう言って、
ちらりと二人を見る。
私も晃も何故、私達の顔を見たのか
不思議に思っていたが、
すぐに晃のお父さんが発する会話で、
晃のお母さんが何故私達のことをチラリと
見てきたのか分かってしまった。
晃父
「なぁ、晃」
「こうして見るとさ……」
少し間を置いてから、
柔らかい声で続けた。
晃父
「晃の彼女は、琴音ちゃんがいいなぁって」
「前から思ってたんだよ。」
一瞬、空気が止まる。
俺は食べていたフライドポテト
を喉に詰まらせて咳き込む。
すぐにドリンクで流し込んでから
口を滑らせる。
晃
「……は?」
俺は、思わず拍子抜けた声を漏らす。
琴音は箸を持ったまま、
きょとんと目を瞬かせた。
そんな俺と琴音を無視し、父さんは
話しの続きを喋る。
晃父
「だって、気心知れてるし」
「晃のこと、昔からよく分かってるからさ。」
晃母
「そうそう。」
「あなたも同じ事思ってたのね。」
母さんも、悪びれもせず頷く。
晃母
「ねぇ、琴音ちゃん将来さ」
「晃のお嫁さんにならない?」
琴音
「へっ!?///」
「あっ……。」
まるで俺の親は冗談の延長の
ような口調で喋る。
けれど、どこか本気も混じっている。
晃
「ちょ、ちょっと待って。」
晃は慌てて立て直す。
晃
「急に何言ってんだよ」
「琴音も困ってるだろ。」
声は平静を装っているのに、
胸の奥がざわついている。
やめてくれ……
期待してはいけない。
分かっているのに、
心が勝手に反応してしまう。
俺は視線を伏せ、
箸を持つ手に力が入った。
琴音
「え、えっと……」
琴音は頬を赤くしながら、
困ったように笑った。
琴音
「私……晃のことは」
「大事な幼なじみです。」
その言葉を選ぶ間、
一瞬だけ、理央の顔が頭をよぎる。
琴音
「それに……」
「今は、ちゃんと彼氏いるので。」
はっきりと、でも柔らかく。
部屋に、静かな間が落ちる。
晃のお母さんは、
少し驚いた顔をしてから、すぐに微笑んだ。
晃母
「あら、そうなのね。」
「ごめんごめん、変なこと言っちゃった。」
琴音
「いえ……。」
私は小さく首を振る。
晃のお父さんも苦笑いする。
晃父
「まぁ、昔から一緒だと、ついな」
「でも、ちゃんと自分の気持ち大事にしなさい。」
琴音
「はい。」
琴音母
「琴音の彼氏、理央君と言ってね」
「もう、すごいイケメンなのよ。」
「しかも、礼儀正しくて見た目に寄らず」
「凄く真面目で、優しい男の子だったわよ。」
晃母
「あら、そうなの?」
「それじゃ、琴音ちゃんは幸せね。」
食事はそのまま続き、
会話も徐々に元の穏やかさに戻っていく。
けれど――
俺の胸の奥は、静かにざわついたままだった。
期待するな……
そう言い聞かせても、
一度浮かんだ可能性は、
簡単には消えてくれない。
私は笑顔で相槌を打ちながらも、
凄く楽しんでいる。
だけどさっきの話しで
”私は、理央の彼氏”
その想いを、
もう迷わず言葉にできる自分がいることに、
少しだけ安堵しながら。
誕生日会は、
笑い声に包まれて進んでいく。
それぞれが、
言えない気持ちを胸に抱えたまま――。