君の事好きになっても良いですか?


俺は、意を決したように部屋のドアを開けた。


軋む音を立てないよう、静かに。
まるで、自分の心音まで聞かれてしまいそうで。


ベッドの上では、琴音がまだ眠っている。
カーテン越しの光が、頬を柔らかく照らしていた。


晃は視線を逸らし、机の椅子に腰を下ろす。

見るな……見たら歯止めがきかなくなる。

そう思うほど、意識は向いてしまう。

小さく寝返りを打つ気配。

「……ん……」

琴音が眉をひそめ、ゆっくりと目を開けた。

「……あれ……?」

寝起きの声で、晃を探す。


「……晃?」

「やっと起きたか。」

できるだけ、いつも通りの声を出す。

琴音は上半身を起こし、
きょろきょろと部屋を見回した
あと、少し気まずそうに笑った。

「ごめん、寝ちゃった……」


「いいよ。疲れてたんだろ?」


「うん……。」

頭をかきながらベッドから降りる琴音を見て、
晃は胸の奥が、きしむのを感じた。

ごめん……琴音。
俺、琴音に隠し事がもう1つ増えてしまった。

出来れば琴音が来る30分前に戻ってほしい。
あれは、事故。
何もない。

そう現実逃避をしてみる。
……そう上手くはいかず
罪を抱えてしまった事に変わりはなかった。




「もうすぐ、琴音のお母さん来る時間だな。」
「うちの父さんも一緒ぐらいに」
「帰って来る頃だし。」


「そっか……もうそんな時間?」


時計を見る琴音の表情は、
すっかり“いつもの琴音”に戻っていた。

その自然さが、
晃を少しだけ救い、同時に追い詰める。





夕方になり、玄関がまた賑やかになった。

「ただいまー。」

晃のお父さんの少し低めで朗らかな声が響く。

「おかえりなさい」

晃のお母さんがキッチンから顔を出し、
その後ろから私のお母さんがひょこっと
顔を出す。

琴音母
「お邪魔してます。」

晃父
「優香さんもう、来てたんだね。」


二人は目が合うなり、懐かしそうに笑う。

琴音母
「こうして集まるの何年目かしらね。」


晃母
「もう数えるのやめましたよ(笑)」


そんな会話に、琴音はくすっと笑った。




「父さん、おかえり。」

晃父
「ただいま。」

晃母
「ねぇ、あなた!」
「見て!」
「琴音ちゃん、大きくなったでしょ?」
「もうすっかりお姉さん。」



晃父
「本当に、もう良いお姉さんだね。」
「可愛いくなって。」
「優香さんの若い頃に似てきたね。」

琴音母
「陽介さん、わかります!?」
「最近どんどん、私の若い頃に」
「似てきてるのよ。」


琴音
「晃のお父さん。」
「ありがとうございます///。」



照れたように答える琴音を見て、
俺の母さんは満足そうに頷いた。





テーブルには料理が並び、
ケーキが中央に置かれる。

晃父
「じゃあ、始めましょうか。」

晃のお父さんの一声で、
自然と全員が席に着く。


晃母以外全員
「お誕生日おめでとう!」


晃母
「みんな……」
「ありがとう!」

拍手と笑顔に包まれて、
グラスが軽く触れ合う。

琴音母
「毎年思うけど、」
「このメンバー落ち着くわねぇ。」



私のお母さんが言うと、
晃のお父さんも、お母さんも大きく頷いた。


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