愛なき凸凹夫婦だったのに、生まじめ妻は御曹司の熱情愛に堕ちる
テレビで見たことのある芸能人が、そこら中にいる。有名歌手も、最近話題になった映画の主演女優も、老舗番組の名司会者もいる。それなのに、周りのひとたちは特に騒ぐでもなく、普通に歓談しているのが不思議だ。
俊哉が陽菜を連れてきたのは、バッグを中心としたとあるハイブランドの旗艦店の開店レセプションだった。俊哉の会社が建設に関わっているということで招待されたらしい。
結婚式以外のパーティーなんて、陽菜にとっては当然初めてだ。
ひとりだったらシャンパングラスを片手に途方に暮れているところだが、会場に入ったときからずっと俊哉がしっかりエスコートしてくれているので、軽食をつまんだりステージを見たり、陽菜なりにパーティーを楽しんでいる。
ドレスも靴もバッグも新調したから、北海道で俊哉の友達と会ったときのように引け目を感じることもない。俊哉の妻として紹介されることにもだんだん慣れてきた。
「大丈夫? そろそろ疲れた?」
俊哉がこそっと尋ねてきた。
「大丈夫ですよ、私なりに楽しんでます」
いまはステージで、男性歌手が去年の大ヒット曲を歌っている。その歌声があんまり見事なのでうっとりしてしまう。
「……妬けるな」
「え?」
「そんな熱っぽい目で他の男を見られると複雑な気分だ」
「他の男って」
陽菜だって俊哉が他の女性に見とれていたらあんまりおもしろい気分ではなくなるだろうが、芸能人は別枠ではないかと思う。
「あと三十分くらいいたら帰ろう。挨拶するべきひとにはもうだいたいしたから」
「わかりました」
陽菜が頷いたときだった。
「俊哉っ!」
後ろから尖った声が聞こえてきて、陽菜と俊哉は同時に振り返った。
声の主は、陽菜と同じくらいの年頃の女性だった。金髪に近い茶色のショートボブと露出の多いミニドレスがよく似合う、勝ち気そうな女性だ。スタイルも抜群だし、芸能人だろうか。
女性がピンヒールを履いた足をカツカツ鳴らしながらこちらに近づいてくる。
彼女の気迫に負けて、陽菜は一歩下がった。
「美玲。なんでここに」
俊哉が呟いた。
聞いたことのある名前だと思った直後、俊哉が逃げられた元婚約者だと思いいたる。
駆け落ちしたと聞いていたが、こんな公の場に出てくるところを見ると、戻ってきたのだろうか。
美玲は驚いた顔をしている俊哉の前に立ち、睨むように彼を見上げた。
「結婚したって、どういうこと?」
「うちの親から聞いたのか。どういうもこういうも、結婚したいと思うひとと出会ったから結婚しただけだよ」
俊哉は腰に手を回して陽菜を前に出した。
「紹介しよう。妻の陽菜だ」
「えっと……はじめまして」
他にどうしたらいいのかわからず、軽く頭を下げた。
「この子が……?」
うさんくさいものを見る目で頭のてっぺんからつま先までじろじろ見られる。値踏みするような視線は、北海道でも体験したが、けっして気持ちのいいものではない。
「こんな地味な子のどこがいいの」
鼻で笑うように言われ、カッと顔が熱くなる。
「上品と言ってくれ」
「ドレスだってなんだかさえないし」
「これは俺が見立てたドレスだ。だいたい俺がどんな女性と結婚しようが、おまえにはもう関係ないだろう、新婚さん」
「関係ないなんて……」
美玲が悔しそうに唇を噛む。
「俺たちはもう帰るよ。おまえも旦那と仲良くな」
ひらひらっと美玲に手を振って、俊哉は陽菜の腰を抱いたままパーティー会場をあとにした。
俊哉が陽菜を連れてきたのは、バッグを中心としたとあるハイブランドの旗艦店の開店レセプションだった。俊哉の会社が建設に関わっているということで招待されたらしい。
結婚式以外のパーティーなんて、陽菜にとっては当然初めてだ。
ひとりだったらシャンパングラスを片手に途方に暮れているところだが、会場に入ったときからずっと俊哉がしっかりエスコートしてくれているので、軽食をつまんだりステージを見たり、陽菜なりにパーティーを楽しんでいる。
ドレスも靴もバッグも新調したから、北海道で俊哉の友達と会ったときのように引け目を感じることもない。俊哉の妻として紹介されることにもだんだん慣れてきた。
「大丈夫? そろそろ疲れた?」
俊哉がこそっと尋ねてきた。
「大丈夫ですよ、私なりに楽しんでます」
いまはステージで、男性歌手が去年の大ヒット曲を歌っている。その歌声があんまり見事なのでうっとりしてしまう。
「……妬けるな」
「え?」
「そんな熱っぽい目で他の男を見られると複雑な気分だ」
「他の男って」
陽菜だって俊哉が他の女性に見とれていたらあんまりおもしろい気分ではなくなるだろうが、芸能人は別枠ではないかと思う。
「あと三十分くらいいたら帰ろう。挨拶するべきひとにはもうだいたいしたから」
「わかりました」
陽菜が頷いたときだった。
「俊哉っ!」
後ろから尖った声が聞こえてきて、陽菜と俊哉は同時に振り返った。
声の主は、陽菜と同じくらいの年頃の女性だった。金髪に近い茶色のショートボブと露出の多いミニドレスがよく似合う、勝ち気そうな女性だ。スタイルも抜群だし、芸能人だろうか。
女性がピンヒールを履いた足をカツカツ鳴らしながらこちらに近づいてくる。
彼女の気迫に負けて、陽菜は一歩下がった。
「美玲。なんでここに」
俊哉が呟いた。
聞いたことのある名前だと思った直後、俊哉が逃げられた元婚約者だと思いいたる。
駆け落ちしたと聞いていたが、こんな公の場に出てくるところを見ると、戻ってきたのだろうか。
美玲は驚いた顔をしている俊哉の前に立ち、睨むように彼を見上げた。
「結婚したって、どういうこと?」
「うちの親から聞いたのか。どういうもこういうも、結婚したいと思うひとと出会ったから結婚しただけだよ」
俊哉は腰に手を回して陽菜を前に出した。
「紹介しよう。妻の陽菜だ」
「えっと……はじめまして」
他にどうしたらいいのかわからず、軽く頭を下げた。
「この子が……?」
うさんくさいものを見る目で頭のてっぺんからつま先までじろじろ見られる。値踏みするような視線は、北海道でも体験したが、けっして気持ちのいいものではない。
「こんな地味な子のどこがいいの」
鼻で笑うように言われ、カッと顔が熱くなる。
「上品と言ってくれ」
「ドレスだってなんだかさえないし」
「これは俺が見立てたドレスだ。だいたい俺がどんな女性と結婚しようが、おまえにはもう関係ないだろう、新婚さん」
「関係ないなんて……」
美玲が悔しそうに唇を噛む。
「俺たちはもう帰るよ。おまえも旦那と仲良くな」
ひらひらっと美玲に手を振って、俊哉は陽菜の腰を抱いたままパーティー会場をあとにした。