どうぞ、貴方がお望みの結末を。~死を偽装した才女と、彼女を搾取した人々の破滅の物語~
第一章 婚約破棄とその後

 国土の南から西にかけて海に囲まれたアルヴァレス王国は主に交易で栄えている。
 豪奢な白亜の王宮は、港町ブールのほど近くにあり風光明媚な場所で、外国からの留学生や観光客も多く、自由闊達な雰囲気が漂っていた。
 しかし、王侯貴族たちはまるで歴史に取り残されたかのように、古くからの伝統にとらわれている。
 クラリスは、裕福なベルモント侯爵家に生まれ、次期王太子妃になるべく高い教育を受けて育った。
 銀髪に紫の瞳を持つ美しく聡明な少女として名高い。
 だが表向きとは違いベルモント家の内情は複雑で、早くにクラリスの母が亡くなり、相次いで前侯爵が亡くなると、クラリスの父ダリウスが愛人マデラとその息子でクラリスの異母弟ジェイコブを屋敷に連れ込んだ。
 ダリウスだけなく、マデラやジェイコブのひどいふるまいに、古参の使用人たちは耐えられなくなり次々にやめていく。
 そのうえダリウスには、山っ気があり儲け話に目ない。屋敷を留守にすることも多く、投機に手を出し大儲けたり大損したりと好き勝手に暮らしている。
 そのためベルモント家の家計や領地経営、お妃教育、そのすべてが、まだ年端もいかないクラリスの肩にのしかかってきた。
 クラリスが頼れるのはまだ残ってくれている数人の古参の使用人のみで、華やかな外見とは裏腹に彼女は孤独に育つ。

 
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