夏と先生と初恋。

「…ごめん」


「…空回りすぎなんだよ。今の自分のソロ、録音して聴いてみろよ」



涼は、本気だ。


こんなに怒った涼は初めて見たかもしれない。



「どうせ誰かの真似だろ?つぎはぎだらけで、ひまりが何してぇのか、なんも伝わってこない」


「——っ、」



涼の目は、いつも真っ直ぐだ。


真っ直ぐにわたしを射抜く。


その真っすぐな瞳が、言葉が、すごくこわい。



「涼くん!言い過ぎだよ!」



沙耶に肩を叩かれた涼が、はっと我に帰ったように口をつぐむ。



「…わるい。言い過ぎた。頭冷やしてくる」



涼が保健室のから、冷たい廊下へ出ていく。


沙耶が心配そうに涼を見ている。



「…沙耶ももう部活戻りな?」



正直、今は1人になりたい。



「でも…」


「沙耶もオーディション近いでしょ?」


「…うん」



わたしの問題に沙耶を巻き込むわけにはいかない。
< 93 / 99 >

この作品をシェア

pagetop