夏と先生と初恋。
「わたしは大丈夫だから」


「…何かあったら連絡してね?すぐ飛んでいくから!」


「うん。わかった」



わたしにそう念押しした後、沙耶も保健室を出て行った。


誰もいなくなった保健室。



『どうせ誰かの真似なんだろ?つぎはぎだらけで、ひまりがなにしてぇのか、なんも伝わってこない』



今になって、涙があふれてくる。


どうしたらよかったんだろう。


なにをするのが正解だった?


どうしたらわたしのソロにできるの?


わからない。


わかんないよ、もう。


もう、できない。


できないよ…



「…竹中?」



ベッドの端が沈んだ。


背中に、誰かの手のひらが触れている。


ゆっくりと背中を撫でるそれは、暖かくて優しい。



「藤木、先生、」


「——竹中は自分の音、好き?」



先生の表情は変わらない。


いつも通りの凪いだ瞳。



「…嫌いです」
< 94 / 99 >

この作品をシェア

pagetop