夏と先生と初恋。
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扉の隙間から漏れ聞こえるフルートの音。
硬い表情をして廊下に並ぶクラリネットの面々。
コンクールのメンバーオーディションは、パートごとに行われることになった。
…これは、沙耶の音かな
沙耶の音は人一倍聴いてきたから。
顔を見なくてもわかるに決まっている。
沙耶が吹き終えると同時にフルートの音が鳴り止んだ。
足音が近づいてきたと思えば扉が開いて、フルートの人たちが出てくる。
…次は、わたしたちだ。
梨香先輩を先頭にして音楽室に入っていく。
すれ違いざまに、沙耶に肩を叩かれた。
メンバーオーディションに落ちたらソロを吹くどころじゃない。
まずはここで、勝たないと。
藤木先生と副顧問の先生たちの前に一列に並ぶ。
「じゃあ、始めようか」
藤木先生から向けられる視線が、いつもよりほんの少しだけ鋭いような気がする。