部長と私の秘め事
継兄とのアクシデント
その頃には母に【週末、実家に行く】と伝えていて、吉祥寺の実家に泊まる予定でいた。
それを、母から聞いたんだろうか。
「……げ」
メッセージアプリを開くと、亮平から連絡が入っていた。
【週末に家に帰るなら、ついでに迎えに行く】
亮平は港区の湾岸にあるタワマンに住んでいる。
彼はもともとゲーム好きで、ゲーム好きなら必ず知っている大手ゲーム会社に勤務し、独立したあとフリーのエンジニアになって、そこそこ稼いでいるらしい。
おまけに車はフォルクスワーゲンのティグアンだ。生意気な。
私の住まいは西日暮里で、車で迎えに来るのに二十分は掛かるのに、湾岸からわざわざ来るとか……。
というか、亮平の住まいは尊さんと物凄く近い。変わってほしいほどだ。
……というのは置いておいて。
「はぁ……」
自宅にいた私は、ベッドの上でゴロゴロしながらスマホを睨む。
亮平の事を考えるとイライラする。
ギリギリ害にならない程度で接近してくるのが、ムカつく理由の大半を占める。
そんな奴がちょっとリッチな生活をしていると思うと、さらにムカつく。
亮平が勉強して技術を持ち、努力した結果として今の暮らしを送っているのは分かっている。
でも気に食わない奴がいい暮らしをしていると思うと、なんだか腹が立つのだ。
加えて、奴は事あるごとにお洒落なスイーツやデパコスをくれるもんだから、余計にムカつく。
勿論、美奈歩にも同じ物をプレゼントしてるから、継妹に「贔屓している」と不興を買う事はない。
その辺りはちゃんと分かっているのもまた、ムカつく……。
【既読無視すんなよ】
亮平からまたメッセージが入る。
「うるさいなぁ……。メッセージなんだからちょっと待ってよ」
私は乱暴に溜め息をつき、髪を掻き上げる。
毎回、亮平から誘いがあった時、なんて断ろうか言葉に困っている。
『やだ』と言っても『なんで』と聞いてくるし、『あんたの存在がやだ』なんて言えないから、いつも苦しい嘘をついている。
「あー……、もう……」
私はうなったあと、それらしい言い訳を並べた。
【お母さんの好きなおやつを買ってくから、一人でいい】
【ついでだから寄ってやるよ。こっちは車なんだし、足があったほうがいいだろ】
「もおおおおお……」
私は長くうなってからボスッと枕に顔を埋め、溜め息をついて返事をする。
【土曜日の十時半】
【了解】
エステティシャンの美奈歩の職場は吉祥寺で、実家から通いつつ浮いたお金を貯金し、ちょこちょこと海外に行っているみたいだ。
ちなみに継父は広告代理店の部長をしていて、そこそこ稼ぎがある。
母とはお見合いで出会い、再婚に至ったとか。
もう十年近く〝家族〟として過ごしているのに、私だけみんなから浮いている気がする。
本当は仲良くしたいのに、亮平と美奈歩が私に妙な壁を作ったままなので、私もどこか意地を張ってしまっている。
「難しいもんだ……」
呟いたあと、私は尊さんとのメッセージを読み返して元気をもらい、お風呂に入る事にした。
**
実家に行くのにお洒落をする必要はないので、私はニットワンピースを着てコートを羽織った。
髪も一本縛りをくるりんぱしただけで、メイクもベースをやって眉を描いただけ。
賃貸マンションの前で待っていると、亮平の白いティグアンが停まった。
「はぁ……」
無意識に溜め息をついた私は、助手席に乗る。
本当は側にいたくないけど、以前に後部座席に座ったら『意識してんの?』と言われてムカついたのを覚えている。
それに『タクシー運転手じゃないんだから』と言われ、足に使っている申し訳なさも感じ、助手席に座るようにした。
「おはよ」
「……おはよ」
亮平に挨拶され、私はしぶしぶ返事をする。……っていうか、もう昼前だけど。
「それ」
指を挿されてカップホルダーを見ると、紙袋に包まれた何かとスムージーがあった。
それを、母から聞いたんだろうか。
「……げ」
メッセージアプリを開くと、亮平から連絡が入っていた。
【週末に家に帰るなら、ついでに迎えに行く】
亮平は港区の湾岸にあるタワマンに住んでいる。
彼はもともとゲーム好きで、ゲーム好きなら必ず知っている大手ゲーム会社に勤務し、独立したあとフリーのエンジニアになって、そこそこ稼いでいるらしい。
おまけに車はフォルクスワーゲンのティグアンだ。生意気な。
私の住まいは西日暮里で、車で迎えに来るのに二十分は掛かるのに、湾岸からわざわざ来るとか……。
というか、亮平の住まいは尊さんと物凄く近い。変わってほしいほどだ。
……というのは置いておいて。
「はぁ……」
自宅にいた私は、ベッドの上でゴロゴロしながらスマホを睨む。
亮平の事を考えるとイライラする。
ギリギリ害にならない程度で接近してくるのが、ムカつく理由の大半を占める。
そんな奴がちょっとリッチな生活をしていると思うと、さらにムカつく。
亮平が勉強して技術を持ち、努力した結果として今の暮らしを送っているのは分かっている。
でも気に食わない奴がいい暮らしをしていると思うと、なんだか腹が立つのだ。
加えて、奴は事あるごとにお洒落なスイーツやデパコスをくれるもんだから、余計にムカつく。
勿論、美奈歩にも同じ物をプレゼントしてるから、継妹に「贔屓している」と不興を買う事はない。
その辺りはちゃんと分かっているのもまた、ムカつく……。
【既読無視すんなよ】
亮平からまたメッセージが入る。
「うるさいなぁ……。メッセージなんだからちょっと待ってよ」
私は乱暴に溜め息をつき、髪を掻き上げる。
毎回、亮平から誘いがあった時、なんて断ろうか言葉に困っている。
『やだ』と言っても『なんで』と聞いてくるし、『あんたの存在がやだ』なんて言えないから、いつも苦しい嘘をついている。
「あー……、もう……」
私はうなったあと、それらしい言い訳を並べた。
【お母さんの好きなおやつを買ってくから、一人でいい】
【ついでだから寄ってやるよ。こっちは車なんだし、足があったほうがいいだろ】
「もおおおおお……」
私は長くうなってからボスッと枕に顔を埋め、溜め息をついて返事をする。
【土曜日の十時半】
【了解】
エステティシャンの美奈歩の職場は吉祥寺で、実家から通いつつ浮いたお金を貯金し、ちょこちょこと海外に行っているみたいだ。
ちなみに継父は広告代理店の部長をしていて、そこそこ稼ぎがある。
母とはお見合いで出会い、再婚に至ったとか。
もう十年近く〝家族〟として過ごしているのに、私だけみんなから浮いている気がする。
本当は仲良くしたいのに、亮平と美奈歩が私に妙な壁を作ったままなので、私もどこか意地を張ってしまっている。
「難しいもんだ……」
呟いたあと、私は尊さんとのメッセージを読み返して元気をもらい、お風呂に入る事にした。
**
実家に行くのにお洒落をする必要はないので、私はニットワンピースを着てコートを羽織った。
髪も一本縛りをくるりんぱしただけで、メイクもベースをやって眉を描いただけ。
賃貸マンションの前で待っていると、亮平の白いティグアンが停まった。
「はぁ……」
無意識に溜め息をついた私は、助手席に乗る。
本当は側にいたくないけど、以前に後部座席に座ったら『意識してんの?』と言われてムカついたのを覚えている。
それに『タクシー運転手じゃないんだから』と言われ、足に使っている申し訳なさも感じ、助手席に座るようにした。
「おはよ」
「……おはよ」
亮平に挨拶され、私はしぶしぶ返事をする。……っていうか、もう昼前だけど。
「それ」
指を挿されてカップホルダーを見ると、紙袋に包まれた何かとスムージーがあった。