部長と私の秘め事
(そういえばあの時、恋バナを聞きたいって言われたっけ)
修羅場の一月六日、春日さんも事態解決のために協力してくれた。
ビジネス的な〝お礼〟は会社を通すとして、個人的には私とエミリさんの恋バナが聞きたいと言っていたのだ。
メッセージを開くと、思っていたよりフレンドリーな文章があった。
【朱里さん、こんにちは~! 三ノ宮です。春日って呼んでね。以前に言っていた女子会についてだけど、都合のいい日があったら教えてくれない? 男子禁制で都内のちょっといいホテルを借りて、気兼ねなくおしゃべりしたいと思って! 勿論、ホテル代は私が出すから気にしないで!】
文章が明るい。めちゃくちゃ明るい。
(お嬢様だしもっとまじめな態度をとらないと……、と思っていたけど、一つ上だしあまり気負わなくてもいいのかも……?)
そう思うものの、私の下手な一言が何を招くか分からないので、気を抜けない。
(……とはいえ、今はイン・フル子な訳で)
ちゃんとした返事ができる状況で答えたほうがいいと思い、ありのままを伝える事にした。
【春日さん、お久しぶりです。お元気でしたか? 私はインフルエンザに罹患してしまい、今高熱を出しています。もう少しして楽になった頃合いで、再度お返事をしても構いませんか?】
返事を送ると、すぐさまキャラクターが【!!】と驚いているスタンプが送られてきた。
しかも睫毛バシバシの白目になってる、少女漫画風のやつだ。
【変なタイミングでごめんね! 勿論、今はゆっくり休んで! 全然急がないから、元気になったあとで大丈夫だから。返事は気にしないで!】
そのあとキャラクターが【お大事に】と合掌しているスタンプが送られてきた。
私も【ありがとうございます】とキャラクターがお辞儀をしているスタンプを送り、一旦やり取りを終わらせた。
一度お手洗いに行って戻った頃には、町田さんはリビングダイニングの掃除を終えていた。
毎日のように細かなところも掃除をしているから、いざという時に大掃除しなくて済むんだろうな。見習いたい。
「上村さん、伺いたい事があるんですが」
「はい?」
町田さんに呼ばれてそちらを見ると、彼女はトイレにあった紙袋を手にしていた。
「わ……っ」
恥ずかしい!
あわあわと誤魔化そうとしたけれど、町田さんは特に何も気にせず尋ねてくる。
「普段お使いのナプキンって、このシリーズでいいですか? 他に多い時だけ使っている物があるとか、タンポンとか……」
うひぃ……。同性で年上でも、やっぱりちょっと恥ずかしい。
「そ、そうです。いつもこのシリーズばかり使っていて。他はないです」
「じゃあ、予備を買ってきますね。あとサニタリーショーツの替えも必要でしょう。Mサイズで大丈夫ですか? 二重穿きする下着も要りますね」
「アッ、アッ……。自分で買いに……」
恥ずかしさのあまり挙動不審になっていると、町田さんはニッコリ笑う。
「先ほども言いましたが、私の事は第二のおかんと思ってください。それに、そんな状態で外に買い物に行かせたら、私が速水さんに怒られてしまいますし、今後、速水さんと結婚したら奥様になるんですから、もっと家政婦のいる生活に慣れてください」
「……そ、そうは言っても……」
困りつつも、『奥様』という単語ににやついてしまう。
「速水さんが、上村さんの必要な生理用品の予備を買ったあと、お手洗いの収納にセットしてほしいと仰っていたんです。ご帰宅されたあとだと、目につく場所にあったら気まずいかもですし、やるなら今ですよ?」
「……そ、そうですね……」
ここは尊さんの気遣いに感謝して、このマンションにいる間、予備とかを気にしなくていい環境を作るべきだ。
「……じゃ、じゃあ、パンツはMサイズでお願いします。安心できるよう、深穿きのやつで」
「分かりました」
町田さんはニッコリ笑ったあと、「それじゃあお昼になる前に買い物に行ってきますね」と出かける支度を始めた。
私はせいぜい、シンプルな濃紺のやつとかを想像していたんだけど、あとから町田さんが買ってきたサニタリーショーツを見て驚く事になる。
かなり張り切ったらしく、ワコールの可愛い花柄の奴を数枚、そしてなんと最高級ラインのサルートのサニタリーショーツまで買ってこられて、目が飛び出るかと思った。
「うっかり汚せないじゃないですか~」と泣きを入れたら、町田さんはカラカラと笑っていた。
「速水さんに愛されているんですから、可愛い下着の一枚や二枚や十枚、どんどん買ってもらうといいですよ」と言われ、「十枚も要らないっす」としか言えなかった。
薬のお陰で高熱は下がったけど、数日は熱があり、咳をしたり鼻水ズビズバな状態になっていた。
まだだるくてお風呂に入る気力がないと言ったら、尊さんがめちゃくちゃ乗り気で「俺が猫洗いしてやる」と道具を揃えてきた。
「じゃじゃん、ドライシャンプー」
部屋の椅子に座らされた私は、不安げに尊さんを見上げる。
「何ですか? それ」
修羅場の一月六日、春日さんも事態解決のために協力してくれた。
ビジネス的な〝お礼〟は会社を通すとして、個人的には私とエミリさんの恋バナが聞きたいと言っていたのだ。
メッセージを開くと、思っていたよりフレンドリーな文章があった。
【朱里さん、こんにちは~! 三ノ宮です。春日って呼んでね。以前に言っていた女子会についてだけど、都合のいい日があったら教えてくれない? 男子禁制で都内のちょっといいホテルを借りて、気兼ねなくおしゃべりしたいと思って! 勿論、ホテル代は私が出すから気にしないで!】
文章が明るい。めちゃくちゃ明るい。
(お嬢様だしもっとまじめな態度をとらないと……、と思っていたけど、一つ上だしあまり気負わなくてもいいのかも……?)
そう思うものの、私の下手な一言が何を招くか分からないので、気を抜けない。
(……とはいえ、今はイン・フル子な訳で)
ちゃんとした返事ができる状況で答えたほうがいいと思い、ありのままを伝える事にした。
【春日さん、お久しぶりです。お元気でしたか? 私はインフルエンザに罹患してしまい、今高熱を出しています。もう少しして楽になった頃合いで、再度お返事をしても構いませんか?】
返事を送ると、すぐさまキャラクターが【!!】と驚いているスタンプが送られてきた。
しかも睫毛バシバシの白目になってる、少女漫画風のやつだ。
【変なタイミングでごめんね! 勿論、今はゆっくり休んで! 全然急がないから、元気になったあとで大丈夫だから。返事は気にしないで!】
そのあとキャラクターが【お大事に】と合掌しているスタンプが送られてきた。
私も【ありがとうございます】とキャラクターがお辞儀をしているスタンプを送り、一旦やり取りを終わらせた。
一度お手洗いに行って戻った頃には、町田さんはリビングダイニングの掃除を終えていた。
毎日のように細かなところも掃除をしているから、いざという時に大掃除しなくて済むんだろうな。見習いたい。
「上村さん、伺いたい事があるんですが」
「はい?」
町田さんに呼ばれてそちらを見ると、彼女はトイレにあった紙袋を手にしていた。
「わ……っ」
恥ずかしい!
あわあわと誤魔化そうとしたけれど、町田さんは特に何も気にせず尋ねてくる。
「普段お使いのナプキンって、このシリーズでいいですか? 他に多い時だけ使っている物があるとか、タンポンとか……」
うひぃ……。同性で年上でも、やっぱりちょっと恥ずかしい。
「そ、そうです。いつもこのシリーズばかり使っていて。他はないです」
「じゃあ、予備を買ってきますね。あとサニタリーショーツの替えも必要でしょう。Mサイズで大丈夫ですか? 二重穿きする下着も要りますね」
「アッ、アッ……。自分で買いに……」
恥ずかしさのあまり挙動不審になっていると、町田さんはニッコリ笑う。
「先ほども言いましたが、私の事は第二のおかんと思ってください。それに、そんな状態で外に買い物に行かせたら、私が速水さんに怒られてしまいますし、今後、速水さんと結婚したら奥様になるんですから、もっと家政婦のいる生活に慣れてください」
「……そ、そうは言っても……」
困りつつも、『奥様』という単語ににやついてしまう。
「速水さんが、上村さんの必要な生理用品の予備を買ったあと、お手洗いの収納にセットしてほしいと仰っていたんです。ご帰宅されたあとだと、目につく場所にあったら気まずいかもですし、やるなら今ですよ?」
「……そ、そうですね……」
ここは尊さんの気遣いに感謝して、このマンションにいる間、予備とかを気にしなくていい環境を作るべきだ。
「……じゃ、じゃあ、パンツはMサイズでお願いします。安心できるよう、深穿きのやつで」
「分かりました」
町田さんはニッコリ笑ったあと、「それじゃあお昼になる前に買い物に行ってきますね」と出かける支度を始めた。
私はせいぜい、シンプルな濃紺のやつとかを想像していたんだけど、あとから町田さんが買ってきたサニタリーショーツを見て驚く事になる。
かなり張り切ったらしく、ワコールの可愛い花柄の奴を数枚、そしてなんと最高級ラインのサルートのサニタリーショーツまで買ってこられて、目が飛び出るかと思った。
「うっかり汚せないじゃないですか~」と泣きを入れたら、町田さんはカラカラと笑っていた。
「速水さんに愛されているんですから、可愛い下着の一枚や二枚や十枚、どんどん買ってもらうといいですよ」と言われ、「十枚も要らないっす」としか言えなかった。
薬のお陰で高熱は下がったけど、数日は熱があり、咳をしたり鼻水ズビズバな状態になっていた。
まだだるくてお風呂に入る気力がないと言ったら、尊さんがめちゃくちゃ乗り気で「俺が猫洗いしてやる」と道具を揃えてきた。
「じゃじゃん、ドライシャンプー」
部屋の椅子に座らされた私は、不安げに尊さんを見上げる。
「何ですか? それ」