部長と私の秘め事
「ただいまー……、……ん?」

 玄関に入った瞬間、尊さんに手を引かれ、壁に押しつけられた。

「ちょ、ちょちょちょ……、ん、ん……」

 そのまま、ちゅ、ちゅと唇をついばまれ、抱き締められてキスが深くなっていく。

 舌先で歯列をなぞられ、前歯の裏側を探られた時は、ゾクッとして腰を引いてしまった。

 すると尊さんは私の脚の間に太腿を入れ、グッと押してくる。

(ちょっとー!!)

 私は完全にスイッチの入った彼にタジタジになり、ねっとりと濃厚なキスをされ、酸欠気味になってクラクラしてしまう。

「あ……っ、は、はぁ……っ」

 酸素を求めて口を開くと、そのタイミングで舌をヌルヌルと擦りつけられる。

「ん! んぅ……っ、う~~~~……」

 苦しくなってトントンと尊さんの肩を叩くと、彼は口から銀糸を引いて顔を離した。

 その目にはすでに情欲が宿っていて、彼が私を激しく求めている事を知った。

「……嫉妬してないって言ったじゃないですか」

「『どちらともいえない』と言った」

 屁理屈を言われ、私は溜め息をつく。

「日曜の昼間にセックス、どう?」

 尊さんは壁ドンして妖艶な表情で尋ねてくる。

 そんな彼にキュンとしたのは言わずもがな、一晩我慢させていたと思うと断れない。

「……お風呂入ってからなら」

 条件を出すと、尊さんは私にチュッとキスをしてから「お湯を貯めてくる」と上機嫌に中に入っていった。



**



 私たちはお風呂に入ってエッチしたあと、裸のままいちゃついていた。

「あー、満足。あいつらから取り戻した朱里と、めちゃくちゃセックスして満足」

「結局、嫉妬してるんじゃないですか」

「嫉妬していないとは言っていない」

「もー、素直じゃないんだから」

「ん」

 その時スマホの通知音が鳴る。

 尊さんは手を伸ばしてスマホをとると、液晶を見て気怠げに溜め息をつき、ぼやく。

「……ったく、せっかく贅沢な時間を過ごしてるのに……」

「どうしたんですか?」

「ん……、祖父さんに『今週末は都合が悪い』って言ったら、『来週末、用事がなかったら来い』だって」

「伺うと言って、先延ばしにしたら印象が悪くなりますし、来週行きましょう」

「そうだな。返事しとく」

 尊さんはトントンとメッセージを打ったあと、スマホを置くと溜め息をついて私を抱き締めてきた。

「……緊張するなぁ……」

 彼を抱き返して呟くと、尊さんはポンポンと私の背中を叩いて言った。

「うちの両親は問題ありだけど、祖父さんたちは比較的常識人だ。まぁ、ちょっと癖はあるけど、普通に礼儀正しくしていたら大丈夫だと思う」

「あ、エミリさんから少し聞きました」

「あー、エミリなら色々対策を教えてくれそうだな」

「お祖母様って和服をお召しになる方ですか?」

「まぁ、そういうタイプ。祖父さんも年取ってからは『和服のほうが楽』と言ってるかな。でも自分たちの流儀を相手に押しつけるタイプじゃない。着慣れない物を着て対応が疎かになったら、そっちを指摘されるだろうし。『着物に興味があるんですが、分からなくて……』って言ったら、大喜びで教えてくれると思う」

「着物ってなかなか着る機会がないですけど、やっぱり慣れておく必要があるでしょうか」

「祖母はお茶やお花、日本舞踊に箏と、一通りやってる筋金入りのお嬢様だ。『興味がある』って言ったら喜んで教えてくれると思うぜ。……あぁ、三ノ宮さんならそういうのやってるかもな」

「そうですね、聞いてみます」

 今回の女子会でグッと距離感が縮まった春日さんなら、頼み事をしやすい。なんなら、エミリさんも協力してくれるかもしれない。

(初めてのお茶体験が、尊さんのお祖母様と……は、ちょっとプレッシャーだもんな)

 うん、と頷いた私は、尊さんの胸板に顔を押しつける。

「俺も真似事ならできるから、今度一緒にやってみるか」

「はい! ……伺う時、きれいめのワンピースを着ていこうと思ってるんですけど、一緒に選んでくれますか?」

「勿論」

 微笑んだ尊さんは、私を抱き寄せてチュッとキスをした。



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