部長と私の秘め事
繋がる気持ち
「こんなに近くにいるのに、俺はお前が何を考えているのか分からない。触れ合っても、セックスしてお前の中に深く潜り込んでも、心なんて一生分からないんだ」
悲しそうに言われ、彼が本当に私を想ってくれているのが伝わってきた。
「俺はお前と付き合いたい。結婚するかって言ったのは、半分ノリだけど半分本気だ。だから、二人でまず一歩踏み出そう。行動したあとに考えればいいんだ」
そう言って尊さんは私に手を差し伸べ、真剣な顔で見つめてくる。
私は少し間を置いたあと、そっと彼の手を握った。
「……私が間違えそうになったら、教えてください」
「俺だって間違えるよ。話し合っていこう」
尊さんはクスッと笑い、しっかりと私の手を握った。
――この人なら大丈夫かもしれない。
学生時代からずっと殻の中に籠もっていた私の心の扉を、尊さんがノックして開こうとしている。
『そこにいたい気持ちも分かるけど、一緒に歩かないか?』と誘ってくれている。
――この人となら、いい方向に変わっていけるかもしれない。
「……よろしく、……お願いします」
一度は付き合うと決めたけれど、私は改めて彼の気持ちを確認し、今度こそ共に歩こうと覚悟を決めた。
「宜しく、朱里」
尊さんはフワッと優しく笑い、私の額に口づけた。
完敗だと思った私は溜め息をつき、脱力してソファに身を預ける。
「頑張ったから、今日は見逃してやるよ」
「え?」
目を瞬かせると、尊さんは私の髪をサラリと撫でて立ちあがる。
「セックス。したくないなら見逃してやる」
そう言われた私は、無意識に尊さんのシャツを掴んでいた。
「……ん?」
彼は目を細め、私を見て微笑む。
――ずるい。
尊さんはいつも私に求めさせようとする。
「……したくないなんて……。言ってないじゃないですか」
「じゃあ、するか?」
尊さんは笑みを深める。
デートって聞いて高い下着をつけたのに、何もなかったらいじけるしかない。
かといって、自分から誘うのもなんだし、その前に昭人と遭遇してしまってテンション駄々下がりになっていた。
こうやってエッチについて触れられなかったら、きっかけを掴めないままだっただろう。
(……結局、尊さんに救われるんだ)
彼はいつも憎まれ口を叩いて悪者になりながら、先手を読んで私に手を差し伸べてくる。
(こういう気遣いができるんだもん、仕事だってできるよ)
そう思うと、尊さんがいつまでも部長止まりなのを疑問に感じた。
けど、今は――。
「しますよ。高級ホテルでエッチなんて、そうそうできないんだから」
開き直って立つと尊さんはクスッと笑い、「風呂に入って愚民共を見下ろしながら、高いシャンパン飲むか」と言った。
黒い大理石でできたバスルームで、私たちはジェットバスの泡に包まれたまま、深いキスを交わした。
そしてお風呂から上がって体を拭くのももどかしく、ベッドルームに向かった。
最初は激しく求め合ったけれど、「綺麗だな、いい体だ」と言われ、気持ちが乖離していく。
昭人とのセックスは、彼の性欲を鎮めるためのものだった。
求めてくれるのは嬉しかったけど、私はあまり乗り気ではなかったし、体を重ねるたびに心がズレる感覚に陥った。
一方で尊さんに抱かれた私は、初めてセックスの良さを知った。
ただ快楽を求めるだけの行為ではなく、肉体的な悦びと精神的な満足感を得るためのものだと理解した。
でも彼が私の体を褒めた事で、体が目当てなんじゃないかと不安になってきたのだ。
本当に愛してくれる男性と付き合ったなら、その人は恋人の裸身を見ても褒め、行為の最中であっても称賛の言葉を浴びせてくれるだろう。
分かっているのだけれど、私はまったくそういう経験をした事がないので、分からなくなってしまったのだ。
「……なに泣いてんだよ」
彼はいつの間にか流れていた私の涙を、優しく拭う。
「ごめ……っ、なさい……」
「謝るなよ。どうしてほしい?」
尊さんは私の頬を両手で包み、額にキスをしてきた。
悲しそうに言われ、彼が本当に私を想ってくれているのが伝わってきた。
「俺はお前と付き合いたい。結婚するかって言ったのは、半分ノリだけど半分本気だ。だから、二人でまず一歩踏み出そう。行動したあとに考えればいいんだ」
そう言って尊さんは私に手を差し伸べ、真剣な顔で見つめてくる。
私は少し間を置いたあと、そっと彼の手を握った。
「……私が間違えそうになったら、教えてください」
「俺だって間違えるよ。話し合っていこう」
尊さんはクスッと笑い、しっかりと私の手を握った。
――この人なら大丈夫かもしれない。
学生時代からずっと殻の中に籠もっていた私の心の扉を、尊さんがノックして開こうとしている。
『そこにいたい気持ちも分かるけど、一緒に歩かないか?』と誘ってくれている。
――この人となら、いい方向に変わっていけるかもしれない。
「……よろしく、……お願いします」
一度は付き合うと決めたけれど、私は改めて彼の気持ちを確認し、今度こそ共に歩こうと覚悟を決めた。
「宜しく、朱里」
尊さんはフワッと優しく笑い、私の額に口づけた。
完敗だと思った私は溜め息をつき、脱力してソファに身を預ける。
「頑張ったから、今日は見逃してやるよ」
「え?」
目を瞬かせると、尊さんは私の髪をサラリと撫でて立ちあがる。
「セックス。したくないなら見逃してやる」
そう言われた私は、無意識に尊さんのシャツを掴んでいた。
「……ん?」
彼は目を細め、私を見て微笑む。
――ずるい。
尊さんはいつも私に求めさせようとする。
「……したくないなんて……。言ってないじゃないですか」
「じゃあ、するか?」
尊さんは笑みを深める。
デートって聞いて高い下着をつけたのに、何もなかったらいじけるしかない。
かといって、自分から誘うのもなんだし、その前に昭人と遭遇してしまってテンション駄々下がりになっていた。
こうやってエッチについて触れられなかったら、きっかけを掴めないままだっただろう。
(……結局、尊さんに救われるんだ)
彼はいつも憎まれ口を叩いて悪者になりながら、先手を読んで私に手を差し伸べてくる。
(こういう気遣いができるんだもん、仕事だってできるよ)
そう思うと、尊さんがいつまでも部長止まりなのを疑問に感じた。
けど、今は――。
「しますよ。高級ホテルでエッチなんて、そうそうできないんだから」
開き直って立つと尊さんはクスッと笑い、「風呂に入って愚民共を見下ろしながら、高いシャンパン飲むか」と言った。
黒い大理石でできたバスルームで、私たちはジェットバスの泡に包まれたまま、深いキスを交わした。
そしてお風呂から上がって体を拭くのももどかしく、ベッドルームに向かった。
最初は激しく求め合ったけれど、「綺麗だな、いい体だ」と言われ、気持ちが乖離していく。
昭人とのセックスは、彼の性欲を鎮めるためのものだった。
求めてくれるのは嬉しかったけど、私はあまり乗り気ではなかったし、体を重ねるたびに心がズレる感覚に陥った。
一方で尊さんに抱かれた私は、初めてセックスの良さを知った。
ただ快楽を求めるだけの行為ではなく、肉体的な悦びと精神的な満足感を得るためのものだと理解した。
でも彼が私の体を褒めた事で、体が目当てなんじゃないかと不安になってきたのだ。
本当に愛してくれる男性と付き合ったなら、その人は恋人の裸身を見ても褒め、行為の最中であっても称賛の言葉を浴びせてくれるだろう。
分かっているのだけれど、私はまったくそういう経験をした事がないので、分からなくなってしまったのだ。
「……なに泣いてんだよ」
彼はいつの間にか流れていた私の涙を、優しく拭う。
「ごめ……っ、なさい……」
「謝るなよ。どうしてほしい?」
尊さんは私の頬を両手で包み、額にキスをしてきた。