部長と私の秘め事
「……優しく……、……して。……愛されてるって、思いたい……」
いたわるような眼差しで尋ねられたからか、私はポロッと本音を漏らしてしまった。
「ずっと……っ、愛される事が分からなかったの……っ。母は私を愛してくれたけど、途中から新しい家族を気遣うようになって、理解してくれる人がいなくなったように思えた……っ。友達に執着したら、彼氏にまで嫉妬してしまう。……だから……っ、昭人に依存していたけど……っ」
私は震える手で目元を拭う。
「分からないの……っ! 好きってなに? 愛してるってどんな感情? エッチしてる時に、どう反応したらいいのか分からないの……っ! いやらしい事を言われたり、体を褒められたりして、……喜ぶべきなの?」
今まで、誰にもこんな事聞けなかった。
世間のカップルはどんなふうに愛し合い、どう〝普通〟に過ごしているのか分からない。
私は昭人しか知らない。
昭人との付き合い方、セックスが間違えていたら、尊さんと過ごす時に誤った知識のまま望んでしまうかもしれない。
――何もかも、分からない。
尊さんは声を震わせて泣く私の髪を、しばらく優しく撫で続けていた。
「……こうされるのは好きか? 気持ちいい?」
彼に尋ねられ、私は無言でコクンと頷いた。
「じゃあ、これは?」
尊さんは私の頬を両手で包み、額、鼻先、そして唇にキスをしてきた。
「……好き」
「なら、胸に触られるのは?」
彼は私の乳房を包み、揉む。
「……恥ずかしい……、けど……」
「恥ずかしい? 俺はとても綺麗だと思うけど。大きいのに胸の形が良くて最高だ。俺だけの宝物にして、これからずっと朱里の胸だけ愛でていきたい」
彼が褒めてくれているのは分かるけれど、素直に受け止められない自分がいる。
「……胸が大きい事で、ずっと男の人にやらしい目で見られてきたし、友達からはからかい混じりに『羨ましい』って言われた。継妹にはハッキリとは言われなかったけど、『胸で男を誘惑してる』みたいな事を言われて……。あまりいいものと思えてなかった」
小さな声で告白すると、尊さんは首を傾げた。
「それは全部他人の価値観だろ? ……朱里は自分の胸をどう思ってる? こんなにスベスベして綺麗なのに、手入れしてないなんて言わせないぞ」
「……保湿とか、……してるけど……」
ボソッと呟くと、彼はクシャリと髪を撫でてきた。
「なら大切にしてるだろ。自分の体の一部なんだから、他人に何か言われたぐらいで動じるなよ。無責任な言葉でお前の価値を下げるな」
「…………っ」
ポロッと新しい涙が零れる。
――今まで、こんなふうに言ってくれた人なんて、誰一人としていなかった。
男の人はみんな欲混じりの目で私を見て、昭人も恋人の胸が大きい事を周囲に自慢していた。
昭人はいつも私を褒める時、顔と胸の事を言っていた。
当時は『それで喜んでくれるなら』と思ったけど、『もしも私が違う顔で胸が小さくても、付き合ってくれたのかな?』と疑問を抱いた。
それから昭人にとっての私の価値は、中身なのか見た目なのか分からなくなっていった。
「……尊さんは……、私の胸、好き?」
小さな声で尋ねると、彼は私の頬にキスをした。
「好きだよ。でもお前の胸だから好きだ。仮にサイズが違っても好きなのは変わらない」
改めて言葉にされて、ずっと抱えてきたわだかまりがスッと解けていった。
「朱里は可愛いよ。不器用で、恋愛に慣れてなくて、体当たりするような恋しかできない。なのに強がって、傷付かないように必死に頑張ってる。……俺はお前のそういうところが好きだ。顔や体も好きだけど、歳を取ったら変化していく。若くていい体だから惚れたなら、十年、二十年経ったら興味がなくなる? んなアホな」
尊さんは、フハッと笑い、私の髪をクシャクシャ掻き混ぜる。
「お前が俺をまだ信頼しきっていないのは分かる。でも信じてくれ。俺はお前を裏切らない。酔っぱらって正体不明になったのを介抱したし、抱いて体の隅々まで見たよ。『頭スッカラカン』とも言われたし、『パパ活』とも言われた」
暴言を指摘され、私は思わず「ふふっ」と笑う。
「……でも一度でも俺がお前を怒ったか? 呆れた? 見下した?」
私は吸い寄せられるように、彼の色素の薄い目を見る。
その目には、慈愛しかなかった。
「……いいえ」
私は小さく首を横に振る。
そうだ。この人は口も性格も悪いけど、一度たりとも私を害していない。
昭人たちに鉢合わせた時は、大人げなく怒って立ち向かってくれた。
エッチの時も欲のままに振る舞えただろうに、大切に抱き、向き合ってくれている。
「少しずつでいい。俺を信じてくれ。今までつらい想いをして、自己肯定感が低くなったのは分かる。愛される事が分からないのも理解する。俺も同じだ」
〝同じ〟と言われて、涙がこみ上げた。
「俺も、お前ならきちんと愛せると思った。お前だけは違うって信じてる」
尊さんも人をちゃんと愛した事がなく、不安なんだ。
それでも彼は、一歩踏み出して私を愛すると決意した。
――なら、応えないと。
私はグッと唇を引き結び、手で涙を拭う。
「はい……っ」
――愛されたい。
いたわるような眼差しで尋ねられたからか、私はポロッと本音を漏らしてしまった。
「ずっと……っ、愛される事が分からなかったの……っ。母は私を愛してくれたけど、途中から新しい家族を気遣うようになって、理解してくれる人がいなくなったように思えた……っ。友達に執着したら、彼氏にまで嫉妬してしまう。……だから……っ、昭人に依存していたけど……っ」
私は震える手で目元を拭う。
「分からないの……っ! 好きってなに? 愛してるってどんな感情? エッチしてる時に、どう反応したらいいのか分からないの……っ! いやらしい事を言われたり、体を褒められたりして、……喜ぶべきなの?」
今まで、誰にもこんな事聞けなかった。
世間のカップルはどんなふうに愛し合い、どう〝普通〟に過ごしているのか分からない。
私は昭人しか知らない。
昭人との付き合い方、セックスが間違えていたら、尊さんと過ごす時に誤った知識のまま望んでしまうかもしれない。
――何もかも、分からない。
尊さんは声を震わせて泣く私の髪を、しばらく優しく撫で続けていた。
「……こうされるのは好きか? 気持ちいい?」
彼に尋ねられ、私は無言でコクンと頷いた。
「じゃあ、これは?」
尊さんは私の頬を両手で包み、額、鼻先、そして唇にキスをしてきた。
「……好き」
「なら、胸に触られるのは?」
彼は私の乳房を包み、揉む。
「……恥ずかしい……、けど……」
「恥ずかしい? 俺はとても綺麗だと思うけど。大きいのに胸の形が良くて最高だ。俺だけの宝物にして、これからずっと朱里の胸だけ愛でていきたい」
彼が褒めてくれているのは分かるけれど、素直に受け止められない自分がいる。
「……胸が大きい事で、ずっと男の人にやらしい目で見られてきたし、友達からはからかい混じりに『羨ましい』って言われた。継妹にはハッキリとは言われなかったけど、『胸で男を誘惑してる』みたいな事を言われて……。あまりいいものと思えてなかった」
小さな声で告白すると、尊さんは首を傾げた。
「それは全部他人の価値観だろ? ……朱里は自分の胸をどう思ってる? こんなにスベスベして綺麗なのに、手入れしてないなんて言わせないぞ」
「……保湿とか、……してるけど……」
ボソッと呟くと、彼はクシャリと髪を撫でてきた。
「なら大切にしてるだろ。自分の体の一部なんだから、他人に何か言われたぐらいで動じるなよ。無責任な言葉でお前の価値を下げるな」
「…………っ」
ポロッと新しい涙が零れる。
――今まで、こんなふうに言ってくれた人なんて、誰一人としていなかった。
男の人はみんな欲混じりの目で私を見て、昭人も恋人の胸が大きい事を周囲に自慢していた。
昭人はいつも私を褒める時、顔と胸の事を言っていた。
当時は『それで喜んでくれるなら』と思ったけど、『もしも私が違う顔で胸が小さくても、付き合ってくれたのかな?』と疑問を抱いた。
それから昭人にとっての私の価値は、中身なのか見た目なのか分からなくなっていった。
「……尊さんは……、私の胸、好き?」
小さな声で尋ねると、彼は私の頬にキスをした。
「好きだよ。でもお前の胸だから好きだ。仮にサイズが違っても好きなのは変わらない」
改めて言葉にされて、ずっと抱えてきたわだかまりがスッと解けていった。
「朱里は可愛いよ。不器用で、恋愛に慣れてなくて、体当たりするような恋しかできない。なのに強がって、傷付かないように必死に頑張ってる。……俺はお前のそういうところが好きだ。顔や体も好きだけど、歳を取ったら変化していく。若くていい体だから惚れたなら、十年、二十年経ったら興味がなくなる? んなアホな」
尊さんは、フハッと笑い、私の髪をクシャクシャ掻き混ぜる。
「お前が俺をまだ信頼しきっていないのは分かる。でも信じてくれ。俺はお前を裏切らない。酔っぱらって正体不明になったのを介抱したし、抱いて体の隅々まで見たよ。『頭スッカラカン』とも言われたし、『パパ活』とも言われた」
暴言を指摘され、私は思わず「ふふっ」と笑う。
「……でも一度でも俺がお前を怒ったか? 呆れた? 見下した?」
私は吸い寄せられるように、彼の色素の薄い目を見る。
その目には、慈愛しかなかった。
「……いいえ」
私は小さく首を横に振る。
そうだ。この人は口も性格も悪いけど、一度たりとも私を害していない。
昭人たちに鉢合わせた時は、大人げなく怒って立ち向かってくれた。
エッチの時も欲のままに振る舞えただろうに、大切に抱き、向き合ってくれている。
「少しずつでいい。俺を信じてくれ。今までつらい想いをして、自己肯定感が低くなったのは分かる。愛される事が分からないのも理解する。俺も同じだ」
〝同じ〟と言われて、涙がこみ上げた。
「俺も、お前ならきちんと愛せると思った。お前だけは違うって信じてる」
尊さんも人をちゃんと愛した事がなく、不安なんだ。
それでも彼は、一歩踏み出して私を愛すると決意した。
――なら、応えないと。
私はグッと唇を引き結び、手で涙を拭う。
「はい……っ」
――愛されたい。