部長と私の秘め事
――そうだ。
ずっと私は『朱里の側にいるために、カモフラージュの彼氏を作る』と言って、トラウマを隠して明るく振る舞っていた。
でも〝元気な中村恵〟の影には、常に怯えと恐れが潜んでいる。
少しでも自分の弱みを気取られてしまえば、『あいつ、男っぽいくせに一丁前に傷付いてるの?』と嗤われそうで怖かった。
「母に言ったら父に相談して、兄たちにも知られて、嗤われるかと思って言えなかった……っ。……怖いんです……っ。私はちっとも女らしくないのにっ、スカートに手を入れられてっ、触られて……っ、でも、平気なふりをしないと……っ、みんなに嗤われて、朱里にも……っ」
堰を切ったように様々な感情がドッと溢れ、私を押し流していく。
気がつけば私はボロボロと涙を流し、激しく体を震わせて、脈絡のない言葉を繰り返していた。
「恵ちゃん」
異変を感じた涼さんが私の名前を呼ぶけれど、私は彼の顔を見て絶望を覚える。
「涼さんだって……っ、本当の事を知ったら私なんて……っ、~~~~こんな汚い私……っ! ――――ん」
さらに何か言おうとした時、彼に抱き締められ、キスをされていた。
涼さんは私の唇を柔らかく塞ぎ、後頭部を優しく撫でてくる。
私は体を強張らせて震えていたけれど、涼さんに抱き締められ、少しずつ気持ちを落ち着かせていく。
籠もっていた力をゆっくり解放していくと、涼さんは褒めるように私の頭を撫で、背中をトントンと叩く。
そうされると子供扱いされているようで恥ずかしいけれど、彼になら甘えて身を任せてもいいのだと思えた。
涼さんは唇を離し、耳元で「大丈夫」と囁く。
「俺は君を嗤わないよ。信じて」
言われて、私はスンッと洟を啜りつつ小さく頷いた。
涼さんは私を抱いたまま立ちあがり、ベッドのように座面が広いディープソファに移り、共に寝転ぶ。
「目を閉じて、俺の事だけ考えて」
彼に優しく笑いかけられ、私はこの上ない美形をまな裏に焼き付けてから目を閉じた。
「今、恵ちゃんは二泊三日の楽しいテーマパークデートの帰りで、望みを言えば大抵の事は叶えられる男に抱き締められている。マンションのセキュリティは厳重で、変な男につけられてもコンシェルジュが絶対に通さない。ここはとても安全な場所で、もう何にも怯える必要はない」
催眠術のような言葉を聞き、私はゆっくりと体の力を抜いていく。
「恵ちゃんはどこにでも行けるよ。一緒に温泉に行こうか。絶景を見ながら温泉に浸かって、身も心も解放する。南の島に行ったら、一面の海を見ながら美味しい物を食べて、日がなゴロゴロできる。芸術が好きなら、ヨーロッパでもアメリカでもどこでも行って、一日じゃ回りきれない美術館を見よう」
涼さんは私を甘やかす言葉を口にし、優しく頭を撫でてくる。
「美味しい物も沢山食べよう。口の中で溶けるほど柔らかい肉も、新鮮な海鮮も、一流のシェフの技術が詰まった美食も、有名ショコラトリーのチョコレートも、写真映えする綺麗なスイーツも、全部君のものだ」
夢のような話を聞いていると、気持ちがフワフワしてくる。
過去を思いだして震えて泣いていたのに、涼さんの言葉を聞いていると万能感に支配され、何も怖くないと思えてきた。
「二人でキャンプもいいね。揺らめく火を見ながら手作りの料理を食べて、星空を見ながら温かいココアを飲む。……翌朝はスキレットでフレンチトーストを作ろうか。スープも作って、ベーコンとソーセージを焼いて、卵も焼く。あとはマキネッタを使って濃いエスプレッソを作って、ミルクを入れたらカフェラテにもできる。どう?」
「……最高」
呟いて小さく笑うと、涼さんはクシャクシャと私の頭を撫で、額に口づけてきた。
「今の君は何でもできるんだよ。もう何に縛られる必要もない。男を見て怯えなくていいし、スカートを穿くのが怖くても俺が守るから、自由にお洒落を楽しんでいいんだよ。『自分は男っぽい』なんて呪いを掛けないで、憧れている服を好きに着てごらん」
ゆっくり目を開くと、目の前に信じられない美形がいる。
そっと彼の頬を撫でると、涼さんは愛しそうに目を細めて笑った。
「恵ちゃんは今まで硬くつぼんでいた。でもそろそろ、周りを気にする事なく咲いてみていいんじゃないかな? 本当はスカートに憧れているのに、〝何か〟を気にして穿けないなんて勿体ない。……俺だって恵ちゃんのスカート姿見てみたいよ」
最後に涼さんは悪戯っぽく付け加える。
「……涼さん、スカートを穿いた女性が好きですか?」
恐る恐る聞いてみると、彼らしい答えが返ってきた。
「恵ちゃんがパンツスタイルのほうが好きなら無理強いはしない。でも両方楽しみたい気持ちがあるなら、ぜひスカート姿も見てみたいな。選択肢が多くあるなら、色々経験してみるほうが楽しいと思うんだ」
そう言われ、涼さんとデートする時にスカートを穿く自分を想像してみる。
ずっと私は『朱里の側にいるために、カモフラージュの彼氏を作る』と言って、トラウマを隠して明るく振る舞っていた。
でも〝元気な中村恵〟の影には、常に怯えと恐れが潜んでいる。
少しでも自分の弱みを気取られてしまえば、『あいつ、男っぽいくせに一丁前に傷付いてるの?』と嗤われそうで怖かった。
「母に言ったら父に相談して、兄たちにも知られて、嗤われるかと思って言えなかった……っ。……怖いんです……っ。私はちっとも女らしくないのにっ、スカートに手を入れられてっ、触られて……っ、でも、平気なふりをしないと……っ、みんなに嗤われて、朱里にも……っ」
堰を切ったように様々な感情がドッと溢れ、私を押し流していく。
気がつけば私はボロボロと涙を流し、激しく体を震わせて、脈絡のない言葉を繰り返していた。
「恵ちゃん」
異変を感じた涼さんが私の名前を呼ぶけれど、私は彼の顔を見て絶望を覚える。
「涼さんだって……っ、本当の事を知ったら私なんて……っ、~~~~こんな汚い私……っ! ――――ん」
さらに何か言おうとした時、彼に抱き締められ、キスをされていた。
涼さんは私の唇を柔らかく塞ぎ、後頭部を優しく撫でてくる。
私は体を強張らせて震えていたけれど、涼さんに抱き締められ、少しずつ気持ちを落ち着かせていく。
籠もっていた力をゆっくり解放していくと、涼さんは褒めるように私の頭を撫で、背中をトントンと叩く。
そうされると子供扱いされているようで恥ずかしいけれど、彼になら甘えて身を任せてもいいのだと思えた。
涼さんは唇を離し、耳元で「大丈夫」と囁く。
「俺は君を嗤わないよ。信じて」
言われて、私はスンッと洟を啜りつつ小さく頷いた。
涼さんは私を抱いたまま立ちあがり、ベッドのように座面が広いディープソファに移り、共に寝転ぶ。
「目を閉じて、俺の事だけ考えて」
彼に優しく笑いかけられ、私はこの上ない美形をまな裏に焼き付けてから目を閉じた。
「今、恵ちゃんは二泊三日の楽しいテーマパークデートの帰りで、望みを言えば大抵の事は叶えられる男に抱き締められている。マンションのセキュリティは厳重で、変な男につけられてもコンシェルジュが絶対に通さない。ここはとても安全な場所で、もう何にも怯える必要はない」
催眠術のような言葉を聞き、私はゆっくりと体の力を抜いていく。
「恵ちゃんはどこにでも行けるよ。一緒に温泉に行こうか。絶景を見ながら温泉に浸かって、身も心も解放する。南の島に行ったら、一面の海を見ながら美味しい物を食べて、日がなゴロゴロできる。芸術が好きなら、ヨーロッパでもアメリカでもどこでも行って、一日じゃ回りきれない美術館を見よう」
涼さんは私を甘やかす言葉を口にし、優しく頭を撫でてくる。
「美味しい物も沢山食べよう。口の中で溶けるほど柔らかい肉も、新鮮な海鮮も、一流のシェフの技術が詰まった美食も、有名ショコラトリーのチョコレートも、写真映えする綺麗なスイーツも、全部君のものだ」
夢のような話を聞いていると、気持ちがフワフワしてくる。
過去を思いだして震えて泣いていたのに、涼さんの言葉を聞いていると万能感に支配され、何も怖くないと思えてきた。
「二人でキャンプもいいね。揺らめく火を見ながら手作りの料理を食べて、星空を見ながら温かいココアを飲む。……翌朝はスキレットでフレンチトーストを作ろうか。スープも作って、ベーコンとソーセージを焼いて、卵も焼く。あとはマキネッタを使って濃いエスプレッソを作って、ミルクを入れたらカフェラテにもできる。どう?」
「……最高」
呟いて小さく笑うと、涼さんはクシャクシャと私の頭を撫で、額に口づけてきた。
「今の君は何でもできるんだよ。もう何に縛られる必要もない。男を見て怯えなくていいし、スカートを穿くのが怖くても俺が守るから、自由にお洒落を楽しんでいいんだよ。『自分は男っぽい』なんて呪いを掛けないで、憧れている服を好きに着てごらん」
ゆっくり目を開くと、目の前に信じられない美形がいる。
そっと彼の頬を撫でると、涼さんは愛しそうに目を細めて笑った。
「恵ちゃんは今まで硬くつぼんでいた。でもそろそろ、周りを気にする事なく咲いてみていいんじゃないかな? 本当はスカートに憧れているのに、〝何か〟を気にして穿けないなんて勿体ない。……俺だって恵ちゃんのスカート姿見てみたいよ」
最後に涼さんは悪戯っぽく付け加える。
「……涼さん、スカートを穿いた女性が好きですか?」
恐る恐る聞いてみると、彼らしい答えが返ってきた。
「恵ちゃんがパンツスタイルのほうが好きなら無理強いはしない。でも両方楽しみたい気持ちがあるなら、ぜひスカート姿も見てみたいな。選択肢が多くあるなら、色々経験してみるほうが楽しいと思うんだ」
そう言われ、涼さんとデートする時にスカートを穿く自分を想像してみる。