部長と私の秘め事
料理はどれもプロ級に美味しく、涼さんが焼いてくれたお肉も絶品だ。
食べ終わって二人で食器を片づけたあと、涼さんが冷凍庫からアイスを出し、リビングで一緒に食べる事にした。
なお、彼の家にある食器は高価な物が多く、食洗機はあるけれどあまり使えない物も多いらしい。
「今日、このまま泊まっていかない? 明日、車で家まで送るよ」
濃厚な牛乳の味が美味しいミルクアイスを食べていた時、そんな事を言われたものだから、咳き込んでしまった。
「……と、突然ですね……」
「突然かな? 俺は結構、虎視眈々と狙っていたけど」
下心があると悪びれもなく言われると、かえって健全なお誘いに思えてしまう。
(高価な服を沢山買ってもらって、美味しい物もご馳走してもらって、何もしないで帰るのは卑怯だよね……)
考えていると、涼さんはクスッと笑って私の頭を撫でてきた。
「ずるい言い方をしたね。ごめん。散々買い物をして、ご飯も食べさせたら、恵ちゃんが負い目を感じるのは当たり前だ。……でも恋人にする当たり前の事をしただけだから、気にしないでほしい。……いま考えてほしいのは、恵ちゃんが俺の家に泊まりたいか、泊まりたくないかっていう、シンプルな質問の答え。……どうかな?」
こういう時でも、涼さんは恩着せがましい事を言わない。
私の知っている男なら、高価な贈り物をして美味しいご飯を食べさせたなら、当たり前という顔で『抱かせてよ』と言っていたものだ。
私自身、そうなる事を避けるために贈り物をされるのを避けていたけれど、朱里ではない友達からはよくその手の話を聞いていた。
(やっぱり優しいな)
彼の気持ちは分かったけれど、やはり「何かしなくては」という気持ちにはなる。
「……じゃあ、どうなるかは未定、臨機応変に……という感じで」
本当なら「いいですよ」とスパッと即答すべきかもしれないけど、自分の中にいる常識的な私が、「会ったの初回じゃん」と冷静に突っ込んでいる。
直感は大切にしたほうがいいというから、なるべく慎重な返事をした。
「了解」
涼さんは微笑み、「ちょっと来て」と立ちあがった。
私は空いたアイスのカップを置き、彼についていく。
すると涼さんはリビングダイニングにあるドアを開け、「ここは俺の書斎」と微笑む。
五畳ぐらいのそこは、落ち着いたウッド調の空間になっていて、デスクトップパソコンがある他、モニターが四台ぐらい繋がっていた。
壁際には難しそうな本がぎっしり積まれ、まさに書斎という雰囲気だ。
「何のためにこんなにモニターがあるんですか?」
「投資関係。張り付いて見てないとならない時とかもあるし、モニターが複数あると便利なんだ。外にいてもスマホやタブレットでチェックできるけどね」
「へぇぇ……」
さらにその奥に行くと、二十畳近くありそうなマスターベッドルームがあった。
キングサイズのベッドがある他、こちらにも大きな液晶テレビがあり、小さな冷蔵庫もある。
この部屋もバルコニーに面していて、窓辺にはゆったりとした一人掛けのリクライニングソファが置いてあった。
涼さんはウォークインクローゼットに入り、まだビニールに包まれたままのルームウェアを出す。
「これ、どうかな? 好みじゃなかったら後日、別の物を用意するけど、今日着る物としてサイズは合う?」
涼さんが出したのはアイボリーカラーのシンプルなスウェット上下だ。
「あ……、どうも。多分サイズは合うと思います」
ウエストゴムの物なら問題ないと思うし、バストサイズも関係ない。
「俺も愛用してるルームウエアなんだ」
そう言って涼さんはウォークインクローゼットの引き出しから、同じデザインの黒を出す。
「……ペ、ペアルックですか……」
うろたえると、涼さんはニカッと笑う。
「うん、まぁそんな感じ。これ、リカバリーウェアって言うんだ。着ていると血行促進してくれて、体が温まるし疲労回復にも繋がる」
「へぇ! 効果あるんですか?」
興味津々で尋ねると、彼はクスッと笑って言う。
「一晩でピンピンに元気になる訳じゃないけどね。最低限、直に着て二十日過ごしたら、『朝起きた時に体が軽いかな』って感じるぐらい。一応、一般医療機器として販売されているんだ」
「へええ……」
未知の世界を知った私は、手にした何の変哲もないスウェットをスリスリと触ってみる。
「念のため、色違いにラベンダーとピンクも選んだけど、好みじゃなかったらごめんね」
「い、いえ! 用意してもらえただけで、十分です」
「あと、さっき下着をフィッティングしたと思うけど、上下セットの他にもう少し気軽に着けられる物も見繕ってもらった。とりあえず今夜穿く下着も用意してもらったから、……どうぞ」
最後に涼さんは照れくさそうに笑って、袋に入った商品を渡してくる。
食べ終わって二人で食器を片づけたあと、涼さんが冷凍庫からアイスを出し、リビングで一緒に食べる事にした。
なお、彼の家にある食器は高価な物が多く、食洗機はあるけれどあまり使えない物も多いらしい。
「今日、このまま泊まっていかない? 明日、車で家まで送るよ」
濃厚な牛乳の味が美味しいミルクアイスを食べていた時、そんな事を言われたものだから、咳き込んでしまった。
「……と、突然ですね……」
「突然かな? 俺は結構、虎視眈々と狙っていたけど」
下心があると悪びれもなく言われると、かえって健全なお誘いに思えてしまう。
(高価な服を沢山買ってもらって、美味しい物もご馳走してもらって、何もしないで帰るのは卑怯だよね……)
考えていると、涼さんはクスッと笑って私の頭を撫でてきた。
「ずるい言い方をしたね。ごめん。散々買い物をして、ご飯も食べさせたら、恵ちゃんが負い目を感じるのは当たり前だ。……でも恋人にする当たり前の事をしただけだから、気にしないでほしい。……いま考えてほしいのは、恵ちゃんが俺の家に泊まりたいか、泊まりたくないかっていう、シンプルな質問の答え。……どうかな?」
こういう時でも、涼さんは恩着せがましい事を言わない。
私の知っている男なら、高価な贈り物をして美味しいご飯を食べさせたなら、当たり前という顔で『抱かせてよ』と言っていたものだ。
私自身、そうなる事を避けるために贈り物をされるのを避けていたけれど、朱里ではない友達からはよくその手の話を聞いていた。
(やっぱり優しいな)
彼の気持ちは分かったけれど、やはり「何かしなくては」という気持ちにはなる。
「……じゃあ、どうなるかは未定、臨機応変に……という感じで」
本当なら「いいですよ」とスパッと即答すべきかもしれないけど、自分の中にいる常識的な私が、「会ったの初回じゃん」と冷静に突っ込んでいる。
直感は大切にしたほうがいいというから、なるべく慎重な返事をした。
「了解」
涼さんは微笑み、「ちょっと来て」と立ちあがった。
私は空いたアイスのカップを置き、彼についていく。
すると涼さんはリビングダイニングにあるドアを開け、「ここは俺の書斎」と微笑む。
五畳ぐらいのそこは、落ち着いたウッド調の空間になっていて、デスクトップパソコンがある他、モニターが四台ぐらい繋がっていた。
壁際には難しそうな本がぎっしり積まれ、まさに書斎という雰囲気だ。
「何のためにこんなにモニターがあるんですか?」
「投資関係。張り付いて見てないとならない時とかもあるし、モニターが複数あると便利なんだ。外にいてもスマホやタブレットでチェックできるけどね」
「へぇぇ……」
さらにその奥に行くと、二十畳近くありそうなマスターベッドルームがあった。
キングサイズのベッドがある他、こちらにも大きな液晶テレビがあり、小さな冷蔵庫もある。
この部屋もバルコニーに面していて、窓辺にはゆったりとした一人掛けのリクライニングソファが置いてあった。
涼さんはウォークインクローゼットに入り、まだビニールに包まれたままのルームウェアを出す。
「これ、どうかな? 好みじゃなかったら後日、別の物を用意するけど、今日着る物としてサイズは合う?」
涼さんが出したのはアイボリーカラーのシンプルなスウェット上下だ。
「あ……、どうも。多分サイズは合うと思います」
ウエストゴムの物なら問題ないと思うし、バストサイズも関係ない。
「俺も愛用してるルームウエアなんだ」
そう言って涼さんはウォークインクローゼットの引き出しから、同じデザインの黒を出す。
「……ペ、ペアルックですか……」
うろたえると、涼さんはニカッと笑う。
「うん、まぁそんな感じ。これ、リカバリーウェアって言うんだ。着ていると血行促進してくれて、体が温まるし疲労回復にも繋がる」
「へぇ! 効果あるんですか?」
興味津々で尋ねると、彼はクスッと笑って言う。
「一晩でピンピンに元気になる訳じゃないけどね。最低限、直に着て二十日過ごしたら、『朝起きた時に体が軽いかな』って感じるぐらい。一応、一般医療機器として販売されているんだ」
「へええ……」
未知の世界を知った私は、手にした何の変哲もないスウェットをスリスリと触ってみる。
「念のため、色違いにラベンダーとピンクも選んだけど、好みじゃなかったらごめんね」
「い、いえ! 用意してもらえただけで、十分です」
「あと、さっき下着をフィッティングしたと思うけど、上下セットの他にもう少し気軽に着けられる物も見繕ってもらった。とりあえず今夜穿く下着も用意してもらったから、……どうぞ」
最後に涼さんは照れくさそうに笑って、袋に入った商品を渡してくる。