部長と私の秘め事
「俺と恵ちゃんの旅行なら、勿論俺が出す。……その他に、親御さんにプレゼントするとか、朱里ちゃんと女子旅をするとか、憧れていたけれど我慢していた物を買ってみるとか、寄付をしてみるとか、色々使い道はあると思うんだ」
私は彼のあとについて歩き、リビングのソファに座る。
「いやみかもしれないけど、俺みたいに金があると、物欲ってほぼなくなる。代わりに体験に重きを置くようになるんだ。レストランでの食事も、家族や友人とだと楽しい時間を過ごせるからプライスレス。キャンプに行くとか快適なドライブをするとか、綺麗な海でサーフィンをするとか、サファリパーク、オーロラ、イルカやシャチ、世界遺産。……俺はまだこの目で見た事のないものに興味を持っているし、価値を見いだしている」
涼さんの話す事はとてもスケールが大きく、私は圧倒されて言葉を失っていた。
「勿論、贈り物をして人に喜んでもらうのも嬉しい。俺の周りにいる人も大体、自分の欲しいものは手に入れている人ばかりだけど、やっぱりプレゼントされると嬉しいものだからね」
彼は私の両肩に手を置き、ポンポンと叩く。
「毎日の生活から解放されたあと、頑張って稼いだお金をどうやって使ったら生きたお金の使い方になるか、少し考えてごらん。生活費の心配はもうしなくていいから、これからはどうやったら自分らしく、幸せな人生を歩んでいけるかを考えるんだ」
涼さんの言葉を聞いているとポーッとしてしまい、妙な高揚感、無敵感に包まれる。
溜め息をついた私は、スケールの大きな話に少し疲れを覚えて彼をチロリと睨んだ。
「涼さん、新興宗教の教祖様とかできそう。あなたと話していると気持ちがフワフワして、何でもできちゃいそうな気持ちになります」
「おや、光栄だな」
クスクス笑った涼さんが実は割とガチめに依頼を受けて、人生設計やら投資やら何やらのセミナーを開いていると聞いたのは、後日の話だ。
勿論、怪しげなセミナーではなく、成功者としての実体験から色々話すやつらしい。
その時、涼さんのスマホがピコンと鳴り、立て続けにピコピコ鳴りまくる。
「お、引っ掛かったかな」
魚釣りでもしているように言った彼は、スマホを起ち上げて液晶を見る。
そしてニッコリといい笑顔で笑った。
「姉も妹も弟も、なんなら両親も恵ちゃんに興味津々みたいだ」
うわあああああああ!!
忘れていたご家族への挨拶を思い出し、私は両手で頭を抱える。
「そ、それ。なんとか回避できませんか? 急すぎて……」
「勿論、正式な挨拶はまだ先にしておくよ。でも姉や妹のほうが俺よりセンスがいいと思うし、買い物友達には丁度いいんじゃないかな」
めっちゃ格差のある友達ですが……!
物凄い顔をしていると、涼さんはクスクス笑って私の肩を叩いた。
「そう構えなくていいよ。怖い人たちじゃないから」
「……涼さんは素敵な人ですし、疑ってはないんですが」
伝われ、この気持ち。
その時、電子音が鳴って《お風呂が沸きました》と音声案内がした。
「お先にどうぞ」
涼さんに言われ、覚悟を決めた私は「どうも」と言って立ちあがる。
「ボディソープ、何を使うか決めた?」
涼さんは洗面所までついてきて、先ほどの収納を開ける。
「いやー……、こういうの全然使わないので、何がいいのか分かりません」
素直な感想を述べると、涼さんは「恵ちゃんのイメージはー……」と言いながら棚を前に手をさまよわせる。
「恵ちゃんはさっぱり系の香りかな。ジョー・マローンのライムバジル&マンダリンにしておこうか」
「……ならそれで」
私はもう、「お任せコースでお願いします」状態だ。
ランドからのお泊まりでクレンジングとかは持ってきているので、そこだけは死守する。
もっと言えばパジャマも一応持ってきてるんだけど、この豪邸でフェスTシャツとヨレヨレのハーフパンツを着るのは憚られた。
ランドでは部屋にパジャマがあったからそれを着たけど、彼の前で普段のパジャマ姿にならなくて良かった。
「……じゃあ、お先にいただきます」
私がペコリと頭を下げると、涼さんは「書斎にいるから、終わったら教えて」と去っていった。
バスルームはとても広くて、私の住んでいる賃貸マンションのそれとは大違いだ。
おまけにジェットバスだし、浸かった時に肩を温めてくれる奴もついている。
私は涼さんに『良かったらこれ入れて』と言われた、タブレット状の入浴剤を三錠入れ、シュワシュワと溶けるうちに髪や体を洗う事にする。
用意してもらったシャンプー、トリートメントで髪を洗い、涼さんはボディタオルや海綿など、未開封の物を色々用意してくれたけど、普段通り手で体を洗った。
(なんじゃこりゃ、いい匂いする……)
使わせてもらったボディソープはスッキリしたライムの香りがして、とてもいい匂いだ。
私は彼のあとについて歩き、リビングのソファに座る。
「いやみかもしれないけど、俺みたいに金があると、物欲ってほぼなくなる。代わりに体験に重きを置くようになるんだ。レストランでの食事も、家族や友人とだと楽しい時間を過ごせるからプライスレス。キャンプに行くとか快適なドライブをするとか、綺麗な海でサーフィンをするとか、サファリパーク、オーロラ、イルカやシャチ、世界遺産。……俺はまだこの目で見た事のないものに興味を持っているし、価値を見いだしている」
涼さんの話す事はとてもスケールが大きく、私は圧倒されて言葉を失っていた。
「勿論、贈り物をして人に喜んでもらうのも嬉しい。俺の周りにいる人も大体、自分の欲しいものは手に入れている人ばかりだけど、やっぱりプレゼントされると嬉しいものだからね」
彼は私の両肩に手を置き、ポンポンと叩く。
「毎日の生活から解放されたあと、頑張って稼いだお金をどうやって使ったら生きたお金の使い方になるか、少し考えてごらん。生活費の心配はもうしなくていいから、これからはどうやったら自分らしく、幸せな人生を歩んでいけるかを考えるんだ」
涼さんの言葉を聞いているとポーッとしてしまい、妙な高揚感、無敵感に包まれる。
溜め息をついた私は、スケールの大きな話に少し疲れを覚えて彼をチロリと睨んだ。
「涼さん、新興宗教の教祖様とかできそう。あなたと話していると気持ちがフワフワして、何でもできちゃいそうな気持ちになります」
「おや、光栄だな」
クスクス笑った涼さんが実は割とガチめに依頼を受けて、人生設計やら投資やら何やらのセミナーを開いていると聞いたのは、後日の話だ。
勿論、怪しげなセミナーではなく、成功者としての実体験から色々話すやつらしい。
その時、涼さんのスマホがピコンと鳴り、立て続けにピコピコ鳴りまくる。
「お、引っ掛かったかな」
魚釣りでもしているように言った彼は、スマホを起ち上げて液晶を見る。
そしてニッコリといい笑顔で笑った。
「姉も妹も弟も、なんなら両親も恵ちゃんに興味津々みたいだ」
うわあああああああ!!
忘れていたご家族への挨拶を思い出し、私は両手で頭を抱える。
「そ、それ。なんとか回避できませんか? 急すぎて……」
「勿論、正式な挨拶はまだ先にしておくよ。でも姉や妹のほうが俺よりセンスがいいと思うし、買い物友達には丁度いいんじゃないかな」
めっちゃ格差のある友達ですが……!
物凄い顔をしていると、涼さんはクスクス笑って私の肩を叩いた。
「そう構えなくていいよ。怖い人たちじゃないから」
「……涼さんは素敵な人ですし、疑ってはないんですが」
伝われ、この気持ち。
その時、電子音が鳴って《お風呂が沸きました》と音声案内がした。
「お先にどうぞ」
涼さんに言われ、覚悟を決めた私は「どうも」と言って立ちあがる。
「ボディソープ、何を使うか決めた?」
涼さんは洗面所までついてきて、先ほどの収納を開ける。
「いやー……、こういうの全然使わないので、何がいいのか分かりません」
素直な感想を述べると、涼さんは「恵ちゃんのイメージはー……」と言いながら棚を前に手をさまよわせる。
「恵ちゃんはさっぱり系の香りかな。ジョー・マローンのライムバジル&マンダリンにしておこうか」
「……ならそれで」
私はもう、「お任せコースでお願いします」状態だ。
ランドからのお泊まりでクレンジングとかは持ってきているので、そこだけは死守する。
もっと言えばパジャマも一応持ってきてるんだけど、この豪邸でフェスTシャツとヨレヨレのハーフパンツを着るのは憚られた。
ランドでは部屋にパジャマがあったからそれを着たけど、彼の前で普段のパジャマ姿にならなくて良かった。
「……じゃあ、お先にいただきます」
私がペコリと頭を下げると、涼さんは「書斎にいるから、終わったら教えて」と去っていった。
バスルームはとても広くて、私の住んでいる賃貸マンションのそれとは大違いだ。
おまけにジェットバスだし、浸かった時に肩を温めてくれる奴もついている。
私は涼さんに『良かったらこれ入れて』と言われた、タブレット状の入浴剤を三錠入れ、シュワシュワと溶けるうちに髪や体を洗う事にする。
用意してもらったシャンプー、トリートメントで髪を洗い、涼さんはボディタオルや海綿など、未開封の物を色々用意してくれたけど、普段通り手で体を洗った。
(なんじゃこりゃ、いい匂いする……)
使わせてもらったボディソープはスッキリしたライムの香りがして、とてもいい匂いだ。