部長と私の秘め事
ちなみに涼さんもとてもいい匂いがするので、使っている香水を教えてもらったら、メゾンマルジェラのレプリカ、ジャズクラブという奴らしい。
ラムやバニラ、タバコやピンクペッパーなどが混じった、大人の男性という感じの香りだ。
(いい匂いばっかりでフワフワする……)
実際、涼さんの家もあちこちにディフューザーがあり、プンプンとは香らないけど、そこはかとなくいい匂いがする。
(いつも朱里を抱き締めて『いい匂いがする』って言ってたけど、私もああなれるのかな)
朱里から誕生日プレゼントにコスメ系をもらう事はあるけど、彼女は匂い物は『好みがあるから』と言って避けていたようだった。
『恵の好きな香りが知りたいから、一緒に香水見に行こう』と誘われてはいたけど、百貨店の化粧品フロアに行くと、全体的に匂いがきつくて好みを判別するどころじゃないので、延ばし延ばしにして今日に至る。
体も手も保湿はドラストの物で充分だし、制汗スプレーや柔軟剤でも割と匂いがするので、『香水は特にいいや』と思っていた。
けど朱里も篠宮さんも、いつもいい匂いがしていた。
加えて涼さんの匂いも、ずっとクンクンしていたくなる香りで、自分もそれレベルにならないと駄目なのかな……と、今ぼんやり思っている。
(あぁ~……、気持ちいい……)
私の賃貸マンションのお風呂は本当に小さくて、浴槽は一般的なサイズではあるものの、洗い場は非常にコンパクトだ。
(空間が広いっていうだけでも、こんなに気持ちが違うんだな)
おまけにバスルームには防水が効いた液晶やスピーカーもあり、浴槽の縁にはアロマキャンドルもある。
(それにしても、朱里が篠宮さんと暮らすようになってお泊まり会ができなくなったな。今はまだうちにこればいいけど、私が涼さんと暮らし始めたら……。そういう自由はなくなるのかな。……安いホテルでも泊まればいいかもしれないけど、わざわざお金を出すのもなぁ……)
考えているうちに温まったので、上がる事にした。
フカフカのバスタオルで体を拭いてフェイスケアをしたあと、せっかく置いてあるのでボディクリームを塗ってみる。
(『注文の多い料理店』みたいだな……)
私はいい匂いのする自分の腕をクンクンと嗅いだあと、高級パンツを穿いた。
パジャマを着たあと、高級ドライヤーで髪を乾かすと、あっという間に乾いてトゥルントゥルンになった。
「すげー……」
私は鏡の前に立って、髪を手でサラッ、サラッとする。
しばらくしてハッと我に返り、「篠宮さんみたいだから『すげー』って言うのやめよ」と自分に言い聞かせた。
「お先にいただきました」
少し緊張して書斎から顔を覗かせると、黒縁眼鏡を掛けた涼さんがこちらを見た。
「ああ、もう上がった?」
ハイキマシタ、イケメンメガネー!
「…………っ」
不意打ちで眼鏡姿を見せないでほしい。心臓に悪い。
(イケメンってどんなアイテムをつけてもイケメンなんだな。鼻眼鏡つけてやりたい)
私は悔し紛れにパーティーアイテムをつけた涼さんを想像するけれど、それはそれで面白いのでアリかもしれない。
むしろ、彼ならジョークグッズを使って全力で笑かしてきそうで、油断できない。
涼さんは椅子を回転させてこちらを見ると、腕組みして尋ねてくる。
「一つ確認し忘れていた事があるんだけど、一緒に寝ても大丈夫? それとも慣れるまでは別の部屋にしておく?」
そう言われ、少し意外に思った私は呆けた顔をしてしまった。
ここまでお膳立てされたので、てっきり一緒に寝るものと思っていた。
強引に事を運ばないのは彼らしいけれど、いざという時に選択肢を委ねられると、肩透かしを食らった気持ちになる。
お風呂に入ったのだって、抱かれる前提……とは言わないけど、半分ぐらいはある程度の覚悟をしての事だった。
私はどう反応したらいいか分からず、スンッ……として沈黙する。
さっきは涼さんがハニワ顔をしていると思ったけど、多分いまの私もハニワ顔になっている。
すると彼は小首を傾げて微笑んだ。
「一緒に寝ても大丈夫そう?」
「……う、うう……」
誘導されてるなぁ……。
ラムやバニラ、タバコやピンクペッパーなどが混じった、大人の男性という感じの香りだ。
(いい匂いばっかりでフワフワする……)
実際、涼さんの家もあちこちにディフューザーがあり、プンプンとは香らないけど、そこはかとなくいい匂いがする。
(いつも朱里を抱き締めて『いい匂いがする』って言ってたけど、私もああなれるのかな)
朱里から誕生日プレゼントにコスメ系をもらう事はあるけど、彼女は匂い物は『好みがあるから』と言って避けていたようだった。
『恵の好きな香りが知りたいから、一緒に香水見に行こう』と誘われてはいたけど、百貨店の化粧品フロアに行くと、全体的に匂いがきつくて好みを判別するどころじゃないので、延ばし延ばしにして今日に至る。
体も手も保湿はドラストの物で充分だし、制汗スプレーや柔軟剤でも割と匂いがするので、『香水は特にいいや』と思っていた。
けど朱里も篠宮さんも、いつもいい匂いがしていた。
加えて涼さんの匂いも、ずっとクンクンしていたくなる香りで、自分もそれレベルにならないと駄目なのかな……と、今ぼんやり思っている。
(あぁ~……、気持ちいい……)
私の賃貸マンションのお風呂は本当に小さくて、浴槽は一般的なサイズではあるものの、洗い場は非常にコンパクトだ。
(空間が広いっていうだけでも、こんなに気持ちが違うんだな)
おまけにバスルームには防水が効いた液晶やスピーカーもあり、浴槽の縁にはアロマキャンドルもある。
(それにしても、朱里が篠宮さんと暮らすようになってお泊まり会ができなくなったな。今はまだうちにこればいいけど、私が涼さんと暮らし始めたら……。そういう自由はなくなるのかな。……安いホテルでも泊まればいいかもしれないけど、わざわざお金を出すのもなぁ……)
考えているうちに温まったので、上がる事にした。
フカフカのバスタオルで体を拭いてフェイスケアをしたあと、せっかく置いてあるのでボディクリームを塗ってみる。
(『注文の多い料理店』みたいだな……)
私はいい匂いのする自分の腕をクンクンと嗅いだあと、高級パンツを穿いた。
パジャマを着たあと、高級ドライヤーで髪を乾かすと、あっという間に乾いてトゥルントゥルンになった。
「すげー……」
私は鏡の前に立って、髪を手でサラッ、サラッとする。
しばらくしてハッと我に返り、「篠宮さんみたいだから『すげー』って言うのやめよ」と自分に言い聞かせた。
「お先にいただきました」
少し緊張して書斎から顔を覗かせると、黒縁眼鏡を掛けた涼さんがこちらを見た。
「ああ、もう上がった?」
ハイキマシタ、イケメンメガネー!
「…………っ」
不意打ちで眼鏡姿を見せないでほしい。心臓に悪い。
(イケメンってどんなアイテムをつけてもイケメンなんだな。鼻眼鏡つけてやりたい)
私は悔し紛れにパーティーアイテムをつけた涼さんを想像するけれど、それはそれで面白いのでアリかもしれない。
むしろ、彼ならジョークグッズを使って全力で笑かしてきそうで、油断できない。
涼さんは椅子を回転させてこちらを見ると、腕組みして尋ねてくる。
「一つ確認し忘れていた事があるんだけど、一緒に寝ても大丈夫? それとも慣れるまでは別の部屋にしておく?」
そう言われ、少し意外に思った私は呆けた顔をしてしまった。
ここまでお膳立てされたので、てっきり一緒に寝るものと思っていた。
強引に事を運ばないのは彼らしいけれど、いざという時に選択肢を委ねられると、肩透かしを食らった気持ちになる。
お風呂に入ったのだって、抱かれる前提……とは言わないけど、半分ぐらいはある程度の覚悟をしての事だった。
私はどう反応したらいいか分からず、スンッ……として沈黙する。
さっきは涼さんがハニワ顔をしていると思ったけど、多分いまの私もハニワ顔になっている。
すると彼は小首を傾げて微笑んだ。
「一緒に寝ても大丈夫そう?」
「……う、うう……」
誘導されてるなぁ……。