部長と私の秘め事
 今までは美形とか、物凄いお金持ちという印象が強かったけれど、海外に行けば彼の容姿がどうとられるか分からないし、私服姿だと余計に三日月家の御曹司とは思えないだろう。

(普通のTシャツにデニムだし)

 写真に写っている涼さんからは、御曹司感はなく、気のいいヒッチハイカーみたいな雰囲気が出ている。

 画面をスクロールしてざっくりと写真を見せてもらったあと、私は「ありがとうございます」と彼にスマホを返した。

「どういたしまして」

 すると、お礼を言われた直後にチュッとキスをされてしまった。なんで!?

 ビックリして固まっていると、涼さんは私を見てクスクス笑う。

「ごめん。恵ちゃんが可愛くて、ちょっかいかけたくて堪らない。ギューしていい?」

「……い、いいですけど……」

 まさか涼さんが「ギュー」とか、可愛い事を言うと思わなかった。

 朱里だったら「牛していい?」って言うんだろうか。あの子なら言いかねない。

 そんな事を考えている間にも、涼さんは私をギュッと抱き締めてくる。

 そして小さく「可愛いなぁ……」と呟いたのが聞こえ、私はじんわりと頬を染める。

「抱っこしてもいい?」

「え? わ、わっ」

 返事をする前に涼さんはヒョイッと私を横抱きし、怖くなった私はとっさに彼に抱きつく。

「恵ちゃんは軽いよね。抱きやすい」

 涼さんはそう言いながらベッドに向かい、ポスンと私をキングサイズベッドの上に下ろす。

「あ……、と」

 どうすべきか分からなくて固まっていると、涼さんは「入ってみる?」と羽根布団をめくった。

「……お、お邪魔します……」

 私は小さな声で挨拶をし、モソモソとワラジムシのように布団の中に潜った。

(どうしよう……)

 ドッドッ……と胸が高鳴り、何もしていないのに体が熱くなって堪らない。

 涼さんに背を向けて寝ていたけれど、背後で彼が身じろぎしたのを感じてビクッと体を強張らせた。

 彼はスマホを弄ってフェリシアに命令をしたのか、室内の照明がフッと落ちた。

 けれど間接照明はついているので真っ暗ではないし、開けっぱなしの窓からネオンの明かりも差し込んできた。

(……涼さん、こんな景色を見ながら寝てるんだ)

 私は緊張しながらも、映画のワンシーンのような寝室に溜め息をつく。

「……抱き締めても大丈夫?」

 と、涼さんに尋ねられ、私はドキンッと心臓を鳴らしてから「はい」と小さく頷いた。

 また後ろで身じろぎする気配がし、腕が延びてきたと思うと優しく抱き締められる。

「ん……っ」

 緊張しすぎて心臓がバクバクうるさく鳴り、口から出てしまいそうだ。

 ギュッと体に力を込めていると、涼さんは私の髪を掻き上げて耳にかけ、耳たぶにチュッと音を立てて触れるか触れないかのキスをした。

「ひっ、……ぅ……」

 たったそれだけなのに、とんでもなくいやらしい事をされている気持ちになり、私は自分の胸元を手で押さえた。

 そうでないと、本当に心臓が体から零れてしまいそうに思えたからだ。

 次に涼さんは露わになった首筋に優しく唇をつけ、……ちゅ……、と小さな音を立てる。

「んっ!」

 唇を押しつけたままチロリと首筋を舐められた瞬間、私はビクッと震えて大きな声を漏らしてしまった。

 身じろぎすると涼さんの手が乳房を包んでいて、逃げようがない。

(待って……っ!)

 バクバクと胸を高鳴らせて混乱していると、涼さんは耳元で囁いてきた。

「大丈夫? やめたほうがいい?」

 選択肢を与えられ、私は「はぁ……っ」と息を吐く。

 このまま押し流して抱いてしまう事もできるのに、立ち止まって私の意思を尋ねてくれるのは、さすが涼さんだ。

「……大丈夫、です。……ちょっとずつ」

 与えられてばかりではいけないと思った私は、か細い声で返事をする。

 すると涼さんは「良かった」と言い、ヌルッと耳孔の中に舌を差し込んできた。それは聞いてない!

「っひあぁああっ!?」

 耳舐めなんて上級テクを知らない私は、くすぐったさと気持ちよさの間に揉まれ、混乱した悲鳴を上げる。

 声を上げてからバッと口を塞ぎ、冷や汗を滲ませる。
< 398 / 529 >

この作品をシェア

pagetop