部長と私の秘め事
「ん……っ、く、……うぅ……っ」

 涼さんはパジャマ越しに胸を揉み、乳首をカリカリと引っ掻いてくる。

 その気持ちよさに耐えられなくなった私は、体を丸めて涼さんの攻めから逃げようとした。

「怖くないよ。背中伸ばして」

 けれど優しい声に導かれ、私はドキドキしながら彼の胸板に背中をつける。

 すると涼さんは私を仰向けにし、起き上がって息を吐きながら髪を掻き上げた。

(うわ……、やばい……。エロ……)

 微かな光に照らされた涼さんは、普段からは想像できない色香を放っていた。

 整った顔には彫刻のように陰影がつき、その頬には長い睫毛の影ができている。

 彼は無言でスウェットの上を脱ぎ、鍛えられた上半身を晒した。

(わ……、わあ……)

 厚い胸板を見せられると服を着ている時の御曹司感はなくなり、目の前にいるのが一人の男性なのだと思い知らされる。

 想像していたよりずっと鍛えている体を前にすると、〝強気で元気な自分〟が一気に〝女〟になっていくのを感じた。

(待って……、これは……)

 胸がドキドキバクバクと鳴り騒ぎ、うるさいほどだ。

 なのに私は涼さんの半裸から目をそらせず、凝視してしまっている。

 魅入られたようにボーッとしていると、涼さんは私のズボンのウエストゴムに手をかけ、スルリと脱がせてきた。

 そして脚を開き、間に腰を挟んでくる。

(んーっ!!)

 まるでエッチの真っ最中みたいな体勢になり、私は心の中で全力で叫び、悶えた。

 混乱している間にあっという間に上を脱がされた私は、下着一枚の姿になってしまった。

「可愛いね、恵ちゃん。綺麗だ」

 誰よりも美しい涼さんに褒められた私は、照れのあまり両手で胸元を覆って横を向いた。

(涼さんなら、もっとグラマーな女性を抱いた事がありそう)

 思わずそんな事を考えてしまった自分を、殴りたくなった。

(彼はこんなにも私に尽くしてくれて、朱里も篠宮さんも『大丈夫』って言ってくれているのに……)

 すべて、自分に自信がないからだ。

 皆の中心にいて『恵は頼もしいね』と言われ、いい気になっていたくせに、私は誰よりも臆病だ。

 だから――、涼さんに強く愛してほしいと願ってならない。

 私はギュッと目を閉じ、涼さんの首に腕を回すと囁いた。

「……初めてなので優しくしてください」

 その言葉を聞き、涼さんは静かに息を吸い、ゆっくり吐いてから了承する。

「勿論だよ」

(二十六歳にもなって処女なんて、呆れられてないかな)

 不安になったけれど、彼は馬鹿にする人じゃないと分かっている。

 以前は『処女で嬉しい』と言っていたし、心配するべき事ではないんだろう。

「……うまくできなかったらごめんなさい」

 けれど一言謝ると、涼さんはチュッと頬にキスをしてきた。

「男が大切に抱けばいい問題なんだから、君はそう構えなくていいんだよ」

 彼はコツンと額をつけて囁いたあと、首筋にチュッチュとキスをし、鎖骨にも軽く吸い付いて甘噛みし、両手で乳房を優しく揉んでくる。

「ん……」

 これから涼さんに抱かれるのだと思うと、緊張して堪らない。

 できるだけリラックスしたほうがいいんだろうと思っても、慣れない事をされて体がガチゴチだ。

「ん……っ、ぅ……」

 同時に――、脳裏に痴漢に秘所をまさぐられた出来事が蘇った。

「はぁ……っ、……ぁ……っ」

 ――大丈夫。

 私は自分に言い聞かせ、両手で涼さんの腕をギュッと握る。

 それに気づいた彼は、サラリと私の頭を撫でてきた。

「恵ちゃん、目を開いて俺を見て」

 言われて、私は無意識に閉じていた目を開ける。

 視界に入ったのは、豪邸の寝室の中でネオンの光を浴びて微笑む、美しい男性だ。

「俺はいま、恋人を愛している。君はとても大切にされているんだよ。君の尊厳を無視し、蹂躙した男と一緒にしないで」

「……っはい」

 涼さんに愛されていると自覚する事は、彼を信頼する事にも繋がる。

 怖いけれど、すべて曝け出して身を委ね、気持ち良くならないと。

 そう思った私の気持ちを見透かしたように、涼さんはいたずらっぽく笑って付け足した。

「変な使命感に駆られなくていいからね。恵ちゃんをトロトロにさせるスキルはあるつもりだから、リラックスして身を任せてくれたらそれで十分」

 涼さんの言い方がやけに慣れているように思えて、少し嫉妬した私は思わずポコッと彼の肩を叩く。

「……エッチ魔人」

 すると彼はクシャッと笑い、噛み付くようにキスをしてきた。
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