部長と私の秘め事
「……可愛いなぁ、恵」
「本当に可愛いよね。お母さんの声も恵ちゃんに似ていて、お会いするのが楽しみだなぁ……」
満面の笑みを浮かべた涼さんに、尊さんがボソッと突っ込む。
「いくら中村さんが愛しいからって、その母親まで愛でようとするなよ? お前はただでさえ、女性を勘違いさせやすいんだから」
「やだなぁ。そんな真似はしないよ。未来のお義母さんと仲良くして、なんならお義父さんとも、お義兄さんたちとも打ち解けて、いい関係を結んでいきたいだけだ。……ご家族の皆さん、何が好きかリサーチしておかないと駄目だな」
パンと手を合わせてスリスリしている涼さんは、本気で中村家を攻め落としに掛かっている。
(……うん、こりゃ駄目だ。恵に勝ち目はない。大人しく投降せよ)
リビングの隅でツンツンと電話している恵は、涼さんの目から見ればキャンキャン鳴いている豆柴ぐらいに見えているんだろう。
(目がね……。もう、愛しそうで。あれはもう、本当に骨抜きになってるなぁ……)
これだけのイケメン御曹司が、自分の親友にメロメロになっている姿を見ると、面白くて堪らない。
(恵の事を女らしくないって言って、陰で笑ってた同級生、結婚式に招待されたら物凄い顔しそうだなぁ……)
果たして恵が彼女たちを呼ぶかは分からないけれど、私はそんな意地悪な事を考えてニヤリと笑った。
やがて恵は電話を終え、こちらに戻りつつもブスッとした顔で涼さんを睨む。
「母がものすっごい期待してるんですけど……」
「期待されたら応えたくなるな」
「もおおお……」
恵はソファにボスッと倒れ込み、ジタバタする。
でも、ここで「やめてください」と言わないのは、成長した証だ。
「……ん、……ふぁあ……」
私は眠気を覚え、後ろを向いて欠伸をする。
それを見た尊さんは、ポンと背中を叩いてきた。
「そろそろ寝ようか。中村さんのご家族に引っ越しの話をしたし、明日は業者さんに動いてもらって、荷物がこっちに運ばれてきたら、自分の部屋に片づける……でOK?」
最後に涼さんに向かって指さし確認すると、彼は「OK」と頷く。
それから彼は私を見て微笑んだ。
「近いうちに吉祥寺のお宅にお邪魔して、事情を説明しよう。これだけの事があったのに、報告せず『何もなかったです』はまかり通らないから」
家族に報告すると聞き、私はハッと息を呑む。
目の前で涼さんが佳苗さんに報告していたのに、自分には関係ないと思い込んでいた。
「……そうですね」
「俺も、守り切れなかった事をきちんと詫びたいし」
「そんな! 尊さんは……」
否定しようとしたけれど、彼の痛みを含んだ笑みを見て言葉を失う。
(これから結婚しようとしているのに、『大丈夫』で済ませたら駄目だよね。何も言わなかったら尊さんへの信頼問題に関わる)
「……分かりました」
頷くと、尊さんは「ん」と頭をポンポンしてくる。
「気まずいだろうけど、側にいるから」
「……はい」
その言葉一つで、フワッと気持ちが軽くなった。
今まで両親には大切な事をあまり言えずにいた。
学生時代は父を喪って不安な気持ち、母子家庭で母が不在で寂しい気持ちを押し込み、母が再婚したあとも亮平や美奈歩への気持ちを打ち明けられなかった。
すべて、自分の我が儘で母を困らせたくないという気持ちからだ。
けれどこれからは尊さんが隣にいてくれるから、なかなか言い出せない事があっても、勇気をもらえる。
それを察してか、恵がポンと私の背中を叩いてニッと笑った。
「寝よ! 今日は疲れすぎた!」
「うん」
お城みたいな豪邸で、大好きな尊さんと、恵と、涼さんと一緒にいる。
こんなに守られた場所はないし、安心できる所はない。
私のお城は三田のあのマンションだけれど、今日はここでゆっくり休もう。
「おやすみなさい」
ペコリと涼さんに頭を下げると、彼は「おやすみ」と微笑み書斎に向かう。
私と恵、尊さんは廊下を進み、途中で尊さんに「おやすみなさい」を言って、恵の部屋に向かった。
「本当に可愛いよね。お母さんの声も恵ちゃんに似ていて、お会いするのが楽しみだなぁ……」
満面の笑みを浮かべた涼さんに、尊さんがボソッと突っ込む。
「いくら中村さんが愛しいからって、その母親まで愛でようとするなよ? お前はただでさえ、女性を勘違いさせやすいんだから」
「やだなぁ。そんな真似はしないよ。未来のお義母さんと仲良くして、なんならお義父さんとも、お義兄さんたちとも打ち解けて、いい関係を結んでいきたいだけだ。……ご家族の皆さん、何が好きかリサーチしておかないと駄目だな」
パンと手を合わせてスリスリしている涼さんは、本気で中村家を攻め落としに掛かっている。
(……うん、こりゃ駄目だ。恵に勝ち目はない。大人しく投降せよ)
リビングの隅でツンツンと電話している恵は、涼さんの目から見ればキャンキャン鳴いている豆柴ぐらいに見えているんだろう。
(目がね……。もう、愛しそうで。あれはもう、本当に骨抜きになってるなぁ……)
これだけのイケメン御曹司が、自分の親友にメロメロになっている姿を見ると、面白くて堪らない。
(恵の事を女らしくないって言って、陰で笑ってた同級生、結婚式に招待されたら物凄い顔しそうだなぁ……)
果たして恵が彼女たちを呼ぶかは分からないけれど、私はそんな意地悪な事を考えてニヤリと笑った。
やがて恵は電話を終え、こちらに戻りつつもブスッとした顔で涼さんを睨む。
「母がものすっごい期待してるんですけど……」
「期待されたら応えたくなるな」
「もおおお……」
恵はソファにボスッと倒れ込み、ジタバタする。
でも、ここで「やめてください」と言わないのは、成長した証だ。
「……ん、……ふぁあ……」
私は眠気を覚え、後ろを向いて欠伸をする。
それを見た尊さんは、ポンと背中を叩いてきた。
「そろそろ寝ようか。中村さんのご家族に引っ越しの話をしたし、明日は業者さんに動いてもらって、荷物がこっちに運ばれてきたら、自分の部屋に片づける……でOK?」
最後に涼さんに向かって指さし確認すると、彼は「OK」と頷く。
それから彼は私を見て微笑んだ。
「近いうちに吉祥寺のお宅にお邪魔して、事情を説明しよう。これだけの事があったのに、報告せず『何もなかったです』はまかり通らないから」
家族に報告すると聞き、私はハッと息を呑む。
目の前で涼さんが佳苗さんに報告していたのに、自分には関係ないと思い込んでいた。
「……そうですね」
「俺も、守り切れなかった事をきちんと詫びたいし」
「そんな! 尊さんは……」
否定しようとしたけれど、彼の痛みを含んだ笑みを見て言葉を失う。
(これから結婚しようとしているのに、『大丈夫』で済ませたら駄目だよね。何も言わなかったら尊さんへの信頼問題に関わる)
「……分かりました」
頷くと、尊さんは「ん」と頭をポンポンしてくる。
「気まずいだろうけど、側にいるから」
「……はい」
その言葉一つで、フワッと気持ちが軽くなった。
今まで両親には大切な事をあまり言えずにいた。
学生時代は父を喪って不安な気持ち、母子家庭で母が不在で寂しい気持ちを押し込み、母が再婚したあとも亮平や美奈歩への気持ちを打ち明けられなかった。
すべて、自分の我が儘で母を困らせたくないという気持ちからだ。
けれどこれからは尊さんが隣にいてくれるから、なかなか言い出せない事があっても、勇気をもらえる。
それを察してか、恵がポンと私の背中を叩いてニッと笑った。
「寝よ! 今日は疲れすぎた!」
「うん」
お城みたいな豪邸で、大好きな尊さんと、恵と、涼さんと一緒にいる。
こんなに守られた場所はないし、安心できる所はない。
私のお城は三田のあのマンションだけれど、今日はここでゆっくり休もう。
「おやすみなさい」
ペコリと涼さんに頭を下げると、彼は「おやすみ」と微笑み書斎に向かう。
私と恵、尊さんは廊下を進み、途中で尊さんに「おやすみなさい」を言って、恵の部屋に向かった。