部長と私の秘め事
「何もしなくても、私は無条件であなたを受け入れて愛しますよ。わざと意地悪をして試さなくたって、あなたから離れません」

 彼の耳元で囁くと、尊さんは溜め息をついて私を抱き締めてきた。

「……格好悪ぃな」

 その言葉を聞き、私はにっこり笑う。

「いいんですよ。分かりますから」

 尊さんはもう一度息を吐いたあと、自分の気持ちを確かめるように言った。

「俺は、お前が望む抱き方をしたい。……お前とは気が合うから、多分望みは一致してると思う」

 そう言って、彼は優しく私の頭を撫でる。

「勿論、怖がる事はしないし、意思を無視した事もしない。心から、気持ちを込めて奉仕する」

 そう言われて、頭に『SM』という単語が浮かんだ。

 サドとマゾじゃなくて、サービスと満足、サーヴァントとマスターだ。

 一見、Sと言われている人が攻めて主導権を持っているように見えるけれど、本当はSはMのために奉仕し、気持ちよくなってもらいたいと願う。

 それを思いだした私は、尊さんの言っている事を理解した。

(強引なエッチになるのも、優しいエッチになるのも、私次第なんだ)

 そして、多分私は……、自分を見失うぐらいの激しい交わりを求めている。

 理解した途端、私はジワリと頬を染める。

「……最初は優しくしてほしいです。……慣れてないのに強くされるのは嫌です」

 要望を口にすると、尊さんは頷いた。

「了解」

 彼はバスローブを脱ぎ、膝立ちになると私の両頬を手で包んでくる。

「好きだよ」

 尊さんは囁くように言ってから、私に優しくキスをしてきた。

 私たちは何回も唇を優しくついばみ合っていく。

 尊さんの温かな手が肌を這うと、体の芯にポッと小さな熱が宿っていく感じがした。

 舌を絡ませるいやらしいキスをしていると、尊さんはツゥッと私の背中を辿ってきた。

 耳や首筋にキスをされ、舌を這わされた私は、ゾクゾクと身を震わせる。

「綺麗な胸……」

 尊さんは私の乳房を見て呟き、舌先を少し出して素肌を舐めていく。

 その間も両手は背中やお尻、太腿を撫でてくるので、私はモジモジと腰を揺らした。

「……触るぞ。痛かったら言って」

 彼はそう言ったあと、最たる部分に指を這わせてきた。

 とろけるような愛撫を受けながらキスマークを残されると、尊さんの所有欲を感じる気がする。

 いけないのに、思わず心の中で昭人と比べてしまう自分がいて嫌になる。

 比べた上で、昭人は決してこんなに労るような手つきで愛撫しなかったし、私の快楽を優先する事もなかったと実感した。

 悲しいけれど、彼はもう過去の男だ。

 そして私は、昭人よりずっといい男を知ってしまった。

 頭がおかしくなりそうなほど、優しくて淫靡な愛撫を受けた私は、無我夢中で喘ぎ、何度も達してしまった。

 息を乱した私がぐったりと横たわっていると、尊さんはバスローブを脱ぐ。

 いよいよだと思うと、緊張して胸が高鳴ってきた。

 前回は何が〝普通〟なのか分からなくなり、混乱して途中でストップをかけてしまった。

 でもあのあとじっくり話し合ったからか、今回は抱かれる事への抵抗感はなくなっていた。

 多分、尊さんが私を害する事はないと、理解したからだと思う。

 私も彼を愛し、結婚する覚悟を固めた。

 彼が抱えている過去を知り、似た者同士欠けたものを求めて、身を寄せ合っていると知った。

 今はただ、気持ちよくなりたい、彼を愛したい、愛されたいという気持ちで一杯だ。

 尊さんは私が怯えていないのを確認してから下着を脱いだ。

 筋肉質な体を惜しげもなく晒した彼は、匂い立つような色香を放っている。

 顔も体も、この上なく私の好みだ。

 いつもは髪を整髪料でセットしているけれど、今はお風呂上がりの自然な髪型になっていて、その姿を見られる事に特別感を覚えた。

 ――私のものだ。

 美しい彼を見て、心の奥から独占欲が湧き起こる。

「ん」

 両手を伸ばすと、尊さんは微笑んでキスをしてくれた。

 私たちは優しい口づけを交わしてから唇を離し、見つめ合って微笑む。

 そのあと彼は私の脚を開き、深くまで押し入ってきた。

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