部長と私の秘め事
 間接照明に照らされた彼の目は、飴玉みたいに透明感のある綺麗な色に輝いている。

「……慣れてなくて……」

 呟くと、涼さんは「大丈夫」と私の両手を握り、その甲に順番にキスをした。

「痛い事はしないし、本当に嫌だったらすぐやめる。恥ずかしいし緊張するだろうけど、繰り返していかないと、いつまでも怖いままだと思う」

「そ……、ですね……」

 コクンと頷くと、涼さんはスルリと私の太腿を撫でた。

「ひぁっ」

「リラックスして」

 囁かれ、私は細く息を吐いて体の力を抜こうと努力した。

 涼さんはスリップを下げ、露わになった乳房にキスをしては強く吸ってくる。

 やがて乳首をちゅっと吸われ、私は深く息を吸って腰を浮かした。

 そのあと、涼さんは指や舌で丁寧に私を愛撫し、何度も絶頂へといざなった。

 何回も達かされて息も絶え絶えになった私の前で、彼は挿入する準備をしていく。

 鍛え上げられた体を晒した彼が、欲の籠もった目でこちらを見ているさまは、まるで何かの撮影のように思える。

 こんなに美しくて色気のある人が、私を求めるなんて信じられない。

 そう思うのだけれど、彼は「恵ちゃん、抱くよ」と宣言してキスをし、ゆっくり腰を進めてきた。





 挿入されたあとも優しく愛され、数え切れないぐらい絶頂を味わった私は、次に後背位で求められる。

 これ以上達きたくないというのに、余裕たっぷりの涼さんは、あらゆる手段を講じて私を気持ち良くさせてくる。

 快楽を得て幸せなはずなのに、そのような強い感覚に慣れていない私は、涙を流して翻弄されっぱなしだった。

 入れられた瞬間、目の前にチカチカと火花を散らせた私は、口端からタラリと涎を垂らしてまた絶頂した。

 あまりにも連続して「気持ちいい」が襲ってきて、私はバンバンと掌でマットレスを叩いた。

「ちょ……っ、待って! 待って! もう駄目……っ」

「痛い? やめたほうがいい?」

 息を荒げた涼さんに尋ねられ、私は歯を食いしばる。

 ――ずるい!

 涼さんは〝分かっていて〟尋ねている。

 こんな気持ちいい事、やめられる訳がないって分かっていて、「痛いならやめるよ?」って聞いている。

 私が「痛い」って言う訳ないって分かっているくせに。

 自分のテクニックに自信があるから、私を痛くさせない自信があるくせに。

 ――ムカつく!

 私はボロボロと涙を零し、這いずって前に進むと涼さんから逃げる。

「……ん?」

 振り向くと、彼は目を見開いて私を見ていて、その表情が一瞬にして「失敗したか?」という後悔に彩られる。

「……腹立つ」

 私は涙目で涼さんを睨み、まだ快楽でピクピクしているお腹を押さえ、胸元を隠して呟く。

「恵ちゃん? ……ごめん、俺……」

 色気と魅力の権化は、うっとりするような完璧な肉体に薄く汗を掻き、困惑した表情をしている。

 彼にそんな顔をさせているのが、自分の一言、行動一つなのだと思うと、この上ない全能感を覚えてしまう。

「~~~~っ、バカ! 嫌い!」

 昂ぶった私は、感情的になって怒鳴り、両手で顔を覆って溢れる涙を拭う。

「……ごめん。恵ちゃん。謝るよ。……本当にごめん。……どうして怒ってるか教えてくれる?」

 涼さんはそっと私に近づき、優しく肩に触れてくる。

 抵抗されないと分かったあと、彼は私をギュッと抱き締め、手首を縛っていたネクタイを解いた。

「……っく、……うぅっ、……うー……」

 私はポロポロと涙を流し、彼の腕の中でしゃくり上げる。

「痛かった?」

 尋ねられ、私は首を横に振る。
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