部長と私の秘め事

軽井沢へ

 そういう点を真面目に見てしまうと、照れて何もできなくなってしまうので、いつもおふざけのほうへ走ってしまうけれど、本当に極上の男性とお付き合いできていると思う。

 そんな彼に女性として求められていると思うと、物凄く照れくさいけれど、誇らしくもある。

(明日の今頃には、キスされて抱かれてるのかな)

 そう思うだけで、アルコールのせいではなく体が火照ってくる。

「明日、楽しみですね」

「ん。早めに寝ろよ」

「ドキドキして眠れなかったりして!」

「遠足前の小学生か」

 私たちはそんな会話をしながら、明日のお出かけに想いを馳せた。



**



 翌日、私たちは九時半にマンションを出た。

「服、変じゃないかな」

 私は助手席で白いティアードワンピースを摘まむ。

「似合ってるよ」

 黒縁サングラスを掛けた尊さんは、黒いキャップにゆったりめの白T、黒い膝までのハーフパンツに、黒いハイカットスニーカーを履いている。

 天気が崩れた時用に、後部座席にはライトブルーのデニムシャツも置いてある。

 腕時計はタグ・ホイヤーのカレラだそうな。

 ちなみに二人とも右手の薬指に、先日のショッピングで買ったペアリングがある。

 彼から「似合ってる」と言われた私は、ホッと胸を撫で下ろす。

「軽井沢に行くなら、白いワンピースのお嬢さんをやってみたかったんです」

「なかなか、オーソドックスだな」

「オプションで、白っぽい日傘も持ってきてます」

 正確にはグレージュだけれど、遮光性ばっちりのフリルがついた可愛い日傘がお供だ。

 ワンピースはノースリーブで、日焼けしたら困るのでライトグレーの冷感UVカットカーディガンを着ている。

 靴は尊さんと同じブランドの、黒いハイカットスニーカーだ。

「朱里は何を着ても可愛いよ」

 スナック菓子のおじゃがっこをポリポリ食べていた私は、ポリ……、と囓るのをやめて運転席を見る。

「……なんだよ」

 視線を感じた尊さんは、前を向いたまま尋ねる。

「休日の篠宮尊は、糖度高め……」

「褒めただけだよ」

 彼は照れくさそうな顔をして、文句を言った。

「もっと褒めてほしいです!」

「素直だな。いつも褒めてるだろうが」

「もっともっと!」

「おーおー、欲の張った女はいいねぇ」

「食い気は負けません!」

「俺は色気も感じてるけど」

 ……このミコは、油断した時にクイッと攻めてくるから、油断ならない。

 褒められるたびにドキドキしてしまうので、ついおふざけしてしまう悪癖ができてしまった。

 しかも私は、このたび非常に冒険をして、アンシャンテブラ、ショーツという物を持ってきた。

 アンシャンテブラとは、大事な部分がオープンになっている奴だ。

 フランス語の挨拶で「初めまして」とか「お会いできて嬉しいです」という意味で使われる言葉だけど、「魅了された」「喜ばしい」という意味も持つ。

 この下着で、いつも余裕たっぷりのミコを籠絡してやるのだ。

 尊さんはこの週末デートについて、エッチを楽しむためにラブホデートを、と仮の提案をした。

 その時、彼はセクシーランジェリーを用いてプレイしてみないか、とも言った。

 半分は冗談のつもりだったと思うけれど、私だってたまには色んな事を忘れて、尊さんとイチャイチャしたい。

 だからその姿勢を見せるためにも、こちらから色々用意したのだ。

 そうでなければ、彼は私を怖がらせないために、過激な事はしないと思うので。

 結局、尊さんは週末になる前に『デートする先がラブホだけっていうのは味気ないから、やっぱりどこか行くか』と言って、軽井沢に行き先を決めてくれた。

 多分、またいいホテルもとってくれたんだと思う。

 彼は先日の恵の誕生日デートで、高額なお金を使ったからといって、セックスを望んだりしないと言っていたけれど、私ができる事はこれぐらいしかない。

 社会的地位もお金も持っている、家庭的なイケメン男性には、結局のところ愛情と快楽を捧げるしかないのだ。
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